KUT始まりました。

28日、ついに外国人歯科医師のためのコース、通称KUTが始まりました。

メンバーは16人。
シリア人12人と、あとは中国人、チリ人(スウェーデンで生まれたのでスウェーデン語はネイティブです。)、イラン人と日本人の私です。

やはりシリア人はシリア人で固まる傾向があり私たちマイノリティグループは4人で固まっています。語学学校の時と全く同じ図式なのでもう慣れましたが・・・
4人のうちスウェーデン語ネイティブを除いてみんな同じ語学学校(SFA-medicin)に通い、同じ先生に習ったとのこと。偶然です!

中国人の子は2年前にコースに応募したけれど落ちてしまったので、カロリンスカの衛生士コースに2年通い今年の6月に卒業、そしてKUTに入ったという少し変わった経歴の持ち主です。
私を含めた4人はだいたい皆同じ年代(29~33歳)くらいで話も割と合うので仲良くしています。

さて、昨日から1学期が始まりましたが、1学期はどうやら座学が多いようでカロリンスカの生徒たちと勉強することが多くなるようです。

昨日は矯正。4年生と一緒に授業を受けたのですが、学生たちは矯正の授業が初めてだったようで全く知識がありません。なので先生は、矯正の歴史や基礎の基礎、診断の仕方を講義していました。
ここだけの話、Kunskapsprovのためにカロリンスカの過去問・過去の授業を見て勉強したので見たことのあるスライドでした・・・
でもいい復習だと思って頑張ります。

今日はMänniska och samhälle (人間と社会) という授業をなんと歯科医師・歯科衛生士の1年生と一緒に受けました!
共感、信頼、同じ社会に生きている人たちとどううまくやっていくか、幸せとは何か、生きる上でのジレンマ、医療者として大切なのは何か・・・というような話を延々朝から夕方まで聞き、頭が爆発しそうです。
専門用語がたくさん出てくる歯科の授業はほぼ100%理解できるのですが、倫理的な、社会的な、そういう一般的な話になると本当にスウェーデン語が理解できません!
講義する人はものすごい冗談を言う先生で、それにも65%くらいしかついていけませんでした・・・。
言葉ができないって悔しいです。

1年生の授業なので『これから歯科は楽しいぞ!いい職業だぞ!』のような励まし・モチベーションを上げ、これからの学生生活に希望を持たせるような授業でした。

もう6年も大学通った上に、働いてたのにまた学生生活に希望をもたされてもねぇ。。。
とか
この子たちはあと5年通って卒業すると歯科医師になるのかぁ。。。
とか、さらには
私も1年生の時はこんな感じだったのかなあ・・・歯科のこと全く知らなかったな・・・
とかいろいろな思いが頭をめぐっていました。
1年の時と今では、考え方が全然変わりました。
理論だけじゃうまくいかない、患者さんとのコミュニケーションは匙加減が難しい。こういうのは臨床をやらないときっと気づけないことで、臨床経験後にこのような授業を受けられ、初心を思い出すとともに考え方の変化を感じられたのである意味よかったのかもしれません。

最後の授業は有名な先生が来て口腔内の話をしたので面白かったです。
個人的にちょっと思い入れのある先生だったので挨拶したら、優しい対応をしてくれました。

10年前、インターネットでカロリンスカのページを見ながらその先生やほかの有名な先生の顔を見て、
将来ぜったいスウェーデンで勉強してやる!直接この人たちから学んでやる!
そんな野望を抱いていたわけですが、なにから手を付ければいいか、スウェーデン語も話せないし。。。そんな風に悩んでいました。

そして今、実際に目の前に10年前にネットで見た先生が講義をしていて憧れだったカロリンスカの学生になってスウェーデン語で授業を受けている。

なんだか不思議な気分です。

2日目にしてさっそくへとへとですが、明日からも頑張ります!!!

子供の扱い方!

スウェーデンの国民歯科で働いていると、子供と接する機会がかなり多いです。
特に検診や救急の外傷で子供ばっかりの日もあります。

そこで驚いたのが、スウェーデンの歯科医師の子供への対応。

カロリンスカ大学で学生が習っていること、実際に診療を見て、感じたことを書きたいと思います。
それから日本の対応や、他の国の子供への対応を外国人の先生や学生さんから聞く機会があったのそれも紹介したいと思います。

スウェーデンの歯医者さんは子供にめちゃくちゃ優しいです。
それは、子供に歯科恐怖症になってほしくないから。恐怖症になってしまうと、将来大人になってから歯科を避けるようになってしまう可能性が出てきてしまい、問題が大きくなりやすくなってしまいます。
歯科に悪いイメージを持ってしまうかどうかは始めの対応が肝心。なので初めて歯科にかかわる子供には特に気を使っている印象です。

例えば私が子供を治療していた時はもちろん優しい対応を心がけていましたが、
例えば少し泣いても嫌がっても、どうしても麻酔をしなければいけないときは覚悟を決めてするし、治療もしていました。(もちろんあまりにも泣き叫ぶ場合は中断ですけど。)
ところがスウェーデンでは子供が泣いたり嫌がると、すぐに中断そして説得・説得・説得。何度も説得して子供が納得するまで話します。
(こんなに難しい説明して5歳の子供わかるのかな・・・と思う時もたまにありますが。)
それでもダメな場合は、すぐ中断。別の日に鎮静下で治療を行います。

私が働いている国民歯科では沈静ができる先生が何人もいたので結構気軽に鎮静をかけていました。
鎮静は経口か経腸で、コースに数日通えばかけられるようです。
(静脈内鎮静は国民歯科ではやっていません。ちなみにスウェーデンでは歯科医師は全身麻酔はかけられません)

初めて歯科に来た子供にはだいたいInskolning(事前に教えること)を行います。
まず、部屋に入ってもらい歯科用ユニットを見せる。
座ってもらう。
イスが動くのを確認してもらう。
ミラー、ピンセットを見せる。
なぜ使うか説明する。
ミラーを口に入れる。
探針を爪にあてる。
探針を口に入れて咬合面を触診する。
3wayシリンジを確認してもらう。水と空気を手に出す。
子供にも触らせる。
タービン・ハンドピースを見せて確認してもらう。
なぜ使うか説明する。
タービンは音・ハンドピースは振動を事前に伝えておく。
タービンを回して見せる。
ハンドピースに研磨用のバーを付けて爪を磨く。
バキュームを見せる。手を吸う。口を吸う。
使う材料を見せて説明する。
麻酔の説明。
治療の手順の説明。

何度も見せて説明して、子供が理解したのを確認してから次のステップに進みます。
Tell, show, doを重視してます。

やっぱり麻酔で泣いてしまう子が多いのですが、
ここも子供に説明しながら励ましながらうっていきます。
先生は、蚊に刺されるくらいチクっとするよ!とよく説明していますが
これも良し悪しで、この前保護者の方に『前に蚊に刺されるくらいって言われたのにグサッとやられて、子供が歯医者さんはうそつきだ!とショックを受けて歯医者が嫌いになってしまった』といわれました。
きちんと結構痛いよと伝えてくれればよかったのに・・・と。
それを聞いて、『痛いなんて言ったら嫌がるのでは』とは思いましたがいろいろな子供がいるのでしょう。
スウェーデン語がまだまだ不安な私は子供によって対応を変えて言い方も変えるなんてまだまだ難しいのでものすごく不安になりました・・・。

最初のうちは、説明や治療にこーーーんなに時間とるんかい!と思っていましたが、
子供も納得すると次に進めるようでした。
ただやっぱり、泣いてしまう子は泣き叫びます。
一度興奮してしまうと何もしなくてもいたい!というようになるので、そうなってしまうと日を改めるか鎮静・・・となります。

説明はもちろん保護者にもしますが、主に子供と対話する形になります。
確かに治療中は子供の顔しか見ていない気がします。
ポーランドで勉強している学生さんが、
『ふつうは親に説明するだろ! 子供にばかり見せて説明する必要はあるのか』と言っていたので、ポーランドではどう教えているかを聞くと、子供は理解することがあまりできないから主に親御さんに説明するとのことでした。

ちなみにシリア人の子供がシリア人の先生に治療されていた時は、お父さんが頭を押さえつけて泣き叫ぶ子供を無理矢理治療していました。
お父さんも先生も割とハードなスタイルで面白かったです。
先生曰く、泣き叫んだら治療ができないからおさえる!ちょっと強引でも治療を終わらせたほうがいい。保護者もそれで納得するとのことでした。

日本はハードな先生もまだいますが、だいぶ子供と対話することに重きを置きはじめているのではないでしょうか。日本の小児歯科をもっと見ておけばよかったです!
小児歯科の実習中に、やるときは泣いてても覚悟を決めて治療する!こっちが弱い態度を取っていたら子供も覚悟ができなくて泣いてしまう、と言われたことがあったので、タイミングを見てぱっと治療するようにしていました。
なのでスウェーデンの、嫌がったらすぐに中断し子供に語り掛け説得するスタイルはなかなか慣れません。
『あーあー、余計泣かせちゃってるよ』と思うこともしばしば。。。

スウェーデンでは小さくても子供に考えさせて、子供に全部決めさせて、彼らの意見を尊重するんだなと思いました。
それはいいところも悪いところもあると思います。
一歩間違えれば子供の言いなりになってしまうのではないでしょうか。
私は子供を導くような意見も必要だと感じるからです。
(それが洗脳みたいで、主体性がなくなってしまうと思うのかもしれません。)

年齢、性別、人種に関係なく対等に扱うのがスウェーデンらしいです。
話はそれますが、ここでは男性でも女性でも平等に権利が認められ、同じ条件で働き、年をとっても職場では戦力とされます。実際に私の職場には78歳の女性歯科医師がいます。
平等な権利があるため、子供だから、女性だから、外国人だから、高齢だから・・・という言い訳は通じません。なのでみんな強くなっていくのでしょうね。
女性は本当に強いです、この国。日本で育った私は、性別や年齢でできることは変わってくるんだからもっと臨機応変に対応すればいいのになぁなんて思うこともありますけどね。ここだけの話・・・

まぁ郷に入っては郷に従え、これから私の気持ちがどう変化するのか楽しみです。

スウェーデンの良いシステム

お久しぶりです!

夏休みのバイトが終わり、8月初旬~中旬は日本に一時帰国していました。
日本は蒸し暑かったですがご飯が美味しく、道もきれいで今まで当たり前だと思っていたことにいちいち感動してしまいました。

さて、日本ではよく北欧式〇〇がすごい、とか北欧流〇〇を見習おうといった本、セミナーの宣伝を見かけることがありました。電車の中の広告にもありました。
さらに、北欧には認知症寝たきりの老人がいない、医療費が全部タダ。
ゆりかごから墓場までケアしてくれる。鬱が少なく幸福度が高いなどという話が飛び交っているのをたまに耳にします。
そのたびに、『私の主人のおばあちゃんは認知症で寝たきりなんだけどな・・・そもそもそういう人が多いから介護職も足りていないし』とか『医療費タダじゃないし、歯科なんてとんでもなく高額・・・』、『鬱も自殺も多いし・・・』なんて突っ込みをいれています。

歯科界でも、”スウェーデン式の歯科は素晴らしい”と思う風潮が若干あるように感じられますが、果たしてそれはどこまで信用できる情報の上での判断なのでしょう。

もちろん見習うべきところもたくさんあるし、システムは素晴らしいと思いますが
いろいろと日本にはない問題があるのを感じています。
私もスウェーデンは素晴らしい!という先入観をもって引っ越してきたので日々そのイメージが崩れるのを感じています(もちろん素晴らしいと思うことだってあります!)。
完璧な国なんてないし、日本には日本の、スウェーデンにはスウェーデンのいいところがたくさんあるのでそういうのをうまくミックスさせられればいいのになと思います。

スウェーデンの問題点などは私もまだ表面上しか見られていないのでこれからいろいろなことを経験してから書いていこうと思いますが、今回はいいなと思うシステムについて紹介したいと思います。

それは、前回の記事にも書きましたが3歳から21歳(再来年には23歳まで引き上げられる予定)2年おきに子供の義務検診があることです。

義務って言ったってどっやって管理するんだよ、と思うかもしれませんが
管理が可能になる要因としては
国が運営する歯科があること
それから
人の所在が把握しやすい(ネットで名前を引くと住所・電話番号が見られます。)
あとは
国民がみんなパーソナルナンバーで管理されている。
こんなところだと思います。
日本では国民歯科に替わる歯科がないし歯科医院がたくさんあるので患者さんの取り合いになってしまう可能性もありますし、子供全体の把握は難しいのではないでしょうか。

スウェーデンでは生まれるか、居住ビザ(すべての人ではありませんが)をもらうとパーソナルナンバーがもらえ、生涯にわたってその番号を使用したり、その番号で管理されたりします。
こういうパーソナルナンバーのシステムが整っているからこそできることかもしれません。
これで人の管理が簡単になります。

スウェーデンでは子供が生まれると助産師さんが税務署に書類を送り、子供は母親の戸籍に登録されます。
ストックホルムでは子供が3歳になると(またはストックホルムに新たに引っ越してくると)子供の住むコミューンの国民歯科が子供あてに歯科検診のパンフレットを送ります。(コミューンにはだいたい数か所国民歯科があるので、一番近い国民歯科が送っているようです。)
検診は国民歯科に行っても、プライベートの歯科に行ってもいいのですがプライベートに行く場合はきちんと電話してプライベートに行くことを国民歯科に伝えなければなりません。
つまり、ストックホルムは(おそらく他の県もですが)子供全員をきちんと把握して、どこの歯科医院で検診を受けるか、またはきちんと検診を受けているかをチェックしています。

だいたいは国民歯科がSMSか手紙を送り検診の日にちを決めて保護者や本人にお知らせします。
ほとんどの子供は来院するのですが、ケータイ番号が登録された番号と違って連絡がいかずに来院されない場合もあります。そんな時はネットで番号をチェックしてかけなおしたり、手紙を送ります。とにかく子供がなぜ検診を受けないのか、どこにいるのかを把握する必要があります。

さて、前回も書いたように子供の義務検診は3, 5, 7 9, 11, 13, 15, 17, 19, 21, (23)歳で行われますがその項目をざっと紹介したいと思います。

まず3歳。
3歳児はまだ乳歯が生えそろっておらず、さらには口の中を見ることでさえ嫌がる場合も結構あるので保護者におしゃぶりの使用状況や食事の状況、歯磨き状況を聞き
口腔内をざっとみて歯の登録をします。
ぱっとみた段階でカリエスがあったりプラークが厚く残っているような場合はレントゲンを撮ることもありますが、だいたいはレントゲンはとりません。
リスクのある子をピックアップし、保護者にきちんと子供の歯を磨くように指導するのが目的になっています。

5歳は乳歯がそろっているので咬合関係に異常がないか調べ、悪癖があるならやめるよう指導します。
指しゃぶりやおしゃぶりがある場合は、12-22、42-32、すべての6が萌出する前に辞めてもらいます。前歯部にクロスバイトがある場合は削ったりします。
ここでもBWはほぼ撮影しませんが、何かあれば必要に応じて2枚撮影します。
ここでも口腔衛生指導を行い、水・休憩・フッ素の大切さを伝えます。

7歳-9歳では6番と前歯部をチェックします。ここで咬合に異常がある場合は、毎年数回来てくれる矯正専門医に見せるかメールを送って質問します。
矯正専門医が来ると、その子供が矯正を受けるべきか受けないべきかを判断し
矯正するべきだと判断された場合は、国からお金をもらうことができます。
クロスバイトの場合は咬合誘導の必要性も判断します。
もちろんここでもカリエスのチェックをし、必要に応じでBWを撮影します。
そして口腔衛生指導を子供と保護者に行います。
9歳では上顎3を触診しなければいけません。
もし何も触れない場合はレントゲンを撮影し、3の位置を確認しなければいけません。
あまりにも近心に傾斜している場合などは2の歯根を吸収してしまう可能性があるのできちんと経過をみるか口外もしくは矯正専門医に照会します。

犬歯の位置異常の見落としによるトラブルはここ最近増えているらしく、チェックするように厳しく言われているのでみんなかなり注意してみています。

11歳では犬歯が出ているかのチェックや2級・過蓋咬合のチェック、カリエス、口腔衛生指導。
13歳では7の萌出を見ていきます。

15歳は臼歯の関係をチェックし、BWを2枚撮影しカリエスや歯槽骨の状態をチェック、さらには6の近心遠心のポケットを測ります。

17歳ではカリエス、ペリオのチェック。必要に応じて4枚のBWを撮影し、口腔衛生指導。

19、21歳はカリエス・ペリオに追加して親知らずの状態をチェックします。

このように各年齢においてチェックする項目がだいたい決まっていますし、電子カルテのシステムに最近ではチェック項目のひな型ができたので見落としにくくなっています。
リスクが高い子はもっと頻繁に歯科医院に来るように指導しますし、必要に応じてすぐに歯科医師・歯科衛生士の予約を入れ問題に対応することができます。(人手不足なので、忙しい先生だと予約は数か月後なんてこともあるんですけどね・・・)
何しろ義務なので子供が定期的に歯科医院に来ますし、日本のように歯科医院をあちこち変えて結局行かなくなるというのが起きにくい気がします。(もちろん国民歯科が嫌でプライベートに行く人もいますが、必ず誰かが口腔内を定期的にチェックしているというシステムは口腔内のトラブル回避に大きく貢献しているのではないでしょうか。)
咬合の傾向や衛生状況をずっと追ってみていけるので、リスクの把握がしやすく問題が見つかると割とすぐに対応できるのがスウェーデンの歯科のいいところだと思っています。

人口が少なく、番号で管理されることに慣れているスウェーデンだからできることなのかもしれません。

日本でも地域で子供をすべて見られるシステムができるようになるといいのですが。
マイナンバーもできたことですし、何とかうまく管理するシステムができればいいなと思います。

番号で管理されることに抵抗がある人もいるかもしれませんが、
慣れてしまえば楽なものですよ!未だに自分の番号を覚えきれてないのですが。。。