Åkte akut. 救急へ行った話。(補足あり)

今回は歯科とは関係ない話なのですが・・・

先週の月曜日、なんと夫Aが救急車で救急(Akut アキュート といいます)に運び込まれました。
その日は昼の2時ごろからおなかの痛みを感じていたAですが、休み休み働いていたそうです。私が夕方帰ってくると、おなかの痛みは強くなったそうですが横になれば治るだろうということで少し横になり、
私はその間に犬の散歩へ。
散歩から帰ってくるとなんと浴室でAが倒れていました!(意識あり)
よく聞くと、気持ちが悪くて吐こうとしてたら痛すぎて失神したとのこと。
痛みでおそらく過呼吸になり、手足がしびれ、さらに痙攣しており私もパニックに。
私が『112(日本の119)に電話しようか?』ときくと、『うん・・・』とのこと。
え!そんな救急車呼ぶほど痛いの!!と驚きつつも112に電話をすると
オペレーターが症状をきき、意識もあるしあまり危ない状態でないと判断したらしく『痛み止めを飲んで様子を見てください』とのこと。
一応痛み止めを飲み20分ほど様子を見るも全く良くならないため再び112へ・・・
すると今度は優しいお兄さんが出てくれていろいろ指示を出してくれました。
少し問診され、すぐに看護師さんに代わってくれ
お腹を押して固いか柔らかいか、顔色、冷や汗をかいているか熱はあるか、嘔吐したかなどを聞かれ答えてるうちに少し落ち着いてきたようです。
すごく緊急なわけではないので、救急車を手配しますが1時間くらいかかりますとのこと。
お義父さんが駆けつけてくれ、Aの様子を見つつ犬の世話をしているうちに救急隊が到着。
1時間くらいかかりました。その間ずっと廊下に横になるA。
時すでに21時をまわっていました。

救急隊の人は熱を測り、血圧、血糖を図りお腹の音を聴診器で聞きまとめたあと救急車でSös(Södersjukhuset 南病院 )に搬送してくれました。

病院についたのは21:30でした。

待ち時間は何時間だったと思いますか?

なんと16時間待ちました。

しかもずっと廊下でストレッチャーに乗せられて。

面白かったのが、スウェーデンに住む人たちは待たされているのに慣れているのかみんな本などを読みながら(痛がりながら)あきらめた顔で待っていました。
尿路結石の方は痛みを我慢しながらなんと20時間近く待っていたとか・・・さすがにその方は激怒していました。
後ろに座っていたおばあさんは、ずーっと文句を言っていましたがそのうち疲れて黙っていました。
痛すぎて、泣きながら授乳している方も。ベビーカーを押して痛みが強いことをスタッフに伝えに行くも、スタッフは冷たく『そこで寝ててください!』と言っていました。ベビーカーを泣きながら押すお母さんを見てすごく悲しい気持ちになりました。
そのあとしばらくしてスタッフがその方のもとへ行っていたので安心しましたが。
Sösの近くにはアルコール依存症、麻薬中毒者用の施設があるためか
ドラッグをやっていたりお酒のせいで運び込まれている方たちがかなりいました。
その人たちはじっと座っていられないで裸で歩きまわったり、大声を出したりしてそのたびにスタッフが5人ほど駆けつけてお世話していたので効率が悪いなと思いながら見ていました。
警察や守衛さんも何度も来ていました。

22時から24時ごろまでは医師が5、6人ほどいたのですがみんなどんどん帰宅していき、最終的には2人ほどで回していました。
『今日のシフトはもう終わり!!』と明るく帰っていくスタッフに舌打ちしている方もいました。

24時ごろに准看護師の方が採血し、
5時に部屋に入れてもらい
6時に医師が診察、
9時20分にCTを取り、
10時半に医師が『虫垂炎』と診断、入院が言い渡されました。
そこからまた廊下で13時半まで待たされ、ようやく病室に入ることができました。

私は10時半の診断結果を聞いた後に大学に直行しました。

そのあとはあっという間でした。穿孔もなく、簡単なケースだったらしいので同じ日の22時に腹腔鏡でオペ、なんと次の日の13時ごろ退院です。
目が覚めてすぐに歩いてくださいと言われ、トイレに行けと言われ、ご飯も食べ、あっという間に家に帰ってきました。
病室に入ってからは、スタッフの感じもよく、Aはびっくりしたそうです。
しかも無駄に入院させないので回復も早くとても満足です。

実はこちらで医師の方々と知り合い仲良くさせていただいてるのですが
すごく相談に乗ってもらい本当に心強かったです。
スウェーデンに住んでいる日本人医療資格職はあまり多くないので、それでつながりが持てて日本では絶対に出会うことのなかった方たちとも交流ができとても楽しいです。
さらに語学学校で、ロシア人医師の子と本当に仲良くなりました。
いつもお世話になっている2人のお医者さんとロシア人の子にすごく励ましてもらって冷静なアドバイスをもらい、どれほど安心したことか!!!
人とのつながりは、スウェーデンに来て良かったことの1つです。

そしてこちらで活躍されている先生にいろいろ話を伺ったのですが
アキュートは完全に人手不足、
さらには病院によっては病室も足りず、麻酔看護師やオペ看の不足によりオペができなくなることもあるとのこと。けれど経済的な理由などで新しく人を雇うのも難しく、さらには看護師さんは本当に大変な仕事なのに業務とお給料が全く合っていないのでのでどんどん人気がなくなっているようです。

歯科のほうもすごくお金と人手が足りていない・・・というのはすごく感じています。

でもこの問題、だいぶ前から議論されているようなのですが一向に改善する気配はないようです。
技術や医療の水準はとてもいいのに、システムに難ありな気がします。

そういえば授業で、(歯科の場合はですが)スウェーデンは健康な人をより健康に保つのは得意だけれど、病気の人を守るのはあまり得意じゃないといっていたのでそういう風潮がこの国にはあるのかもしれません。
(あんまり言いすぎるとスウェーデンに幻想を抱く方に文句を言われてしまいそうですが)

住むのと外から見るのではだいぶイメージに差があるスウェーデンです。

もちろんアキュートでも優先度が高い状態の方は優先されるのですが、優先度が低くても痛みがある状態で16時間も待つのは嫌だな・・・
さらにたくさんの人からマイナスなことを聞いているので老後はやはり日本のほうが安心なのかな・・・なんて思います。

なんだか怒涛の1週間でした。

今回の費用は
救急の料金 400kr
CT代 200kr
部屋代2日 200kr
合わせて800kr (約1万千円)でした。
オペ代はタダです。

日本でよく言われている
病院にかかるのは無料、というのは違いますのでご注意を!
(医療自体は無料のようですが)

スウェーデン語なのですが、料金表のリンクを貼っておきます。

なにしろAが無事に元気になってよかったです!

———補足———–

救急車を呼ぶのが今回難しかったのは、Aの意識がありあまり緊急性が高くないと判断されたからだと予想されます。
1回目に112に電話した際は、なるべく救急車を利用してほしくないという意図が感じられました。(この人の対応はかなり微妙でした。)
ほかの緊急性が高い人に救急車がいきわたらなくなってしまうのを防ぎたいのではないでしょうか。それはどの国でも同じなのではないかと思います。
(日本でも緊急性が高くない人がタクシー代わりに救急車を使用し、本当に必要な人が使えないなんていう話を聞いたことがあります。)
しかし、痛みで気を失いのたうち回り、手足がしびれている様子を見てしまうと
私はパニックになって112に電話するしか方法がありませんでした。
しかし、電話はAと私の両方でスピーカーにしていたので、電話に出た方は
Aは話せるし、大丈夫だろうと思ったと思います。
もしここでAが息をしていなかったり、意識がなかったり、さらに例えばどこかが麻痺したり、視界が消えたり、もしくは何かもっと緊急性の高い症状を示していればすぐに救急車が来たかもしれません。

その一方で、これは義母(大学病院で働いています)から聞いたのですが、112の対応が悪くて亡くなってしまったケースもあるので112があまり信用できないと説明していました。
そういったケースを救うために手あたり次第救急車を出すのか、
それとも本当に救急性の高い人のみを拾うために112でなるべく判断するのか
ジレンマだと思います。

今回はAは、歩くことはできないけれど安静にしていれば痛みが落ち着いており、2回目の112の電話の際に『救急車1時間かかってしまいますが、大丈夫ですか。もし急変したら電話してください』と言われた時も、
1時間横になって待つことができたので、それでいいとお願いしました。

本当に待てなければすぐに救急車は来たのではないかと思います。

私たちは今回幸い”生死をさまよう状態”ではなかったので救急車を1時間待ったという事実しか書けません。

本当に重症な人に救急車が救急手配できないかもしれないけれど、できるだけ患者さんの希望を聞いて、すべての患者さんに重症でなかったとしても救急車を手配する日本と
重症ケースを見逃すかもしれないけど112でスクリーニングして、本当に重症らしい人にだけ救急車を救急手配するスウェーデン。
どっちもどっちですが
どちらも患者さんのことを考えた結果なのではないのでしょうか。
答えはないですが、待たされたほうは日本がいいと思うだろうし、
重症なのに救急車が来なくて家族を亡くしてしまったりすればスウェーデンのほうがいいと思うのではないでしょうか。

救急車の料金は、ストックホルムでは無料でした。
ただ、調べてみたところ、地域によっては救急車の搬送代(私が見た県は150kr)がかかるところもあるようです。

料金はCTは撮影前に200Kr払いましたが、
救急の料金・入院代は後で請求書が来て支払いました。

1177という医療のサイトでは、Aのカルテを見ることができ
手術の様子から術後の様子まで事細かに知ることができました。
(患者さんがカルテを見られるシステムは徐々に全国に広がっています。もちろん、癌などの病気に関してはいろいろと決まりがあって、患者さんの不利益になるようなことは避けているようです。)

私は、スウェーデンの医療の水準は優れていると思います。
無駄がない入院のさせ方にもとても共感しました。
しかしシステムのせいでそれがうまく表に出ていないようにも感じています。
(歯科は逆で、システム(特に予防の)がいいので問題があったとしても世界にいいイメージを与えているように見えます。)

実は、Aが今回入院する前、私が足を怪我してカロリンスカの救急に行ったことがあります。その時は朝5時ごろに自力で救急に行ったのですが、1時間も待たずに見てもらえました。
医師も大変感じがよく、手際よく診察・診断・そしてその後の対応まで考えてくれ非常に安心しました。

なので、救急で待たされるかどうかは運にもよると思います。
(待たされることのほうが多い気はしますが・・・)

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今回書いたことはあくまでも私たちが体験したことなので、すべてのケースがそうであるとは言えないのをどうかご了承いただければ幸いです。

 

エンドの講義。貼薬。

今日はエンドの講義がありました。
エンド科で働いていたこともあり、私はエンドが大好きなので特にエンドの講義には力が入ります。

今日の内容は、貼薬と仮封。
貼薬については日本でもいろいろな意見があり、先生によって考え方が違うこともあります。
私が働いていた大学では
“カルシペックスは根管口にちょこっと。根管内にはべったりつけない。根尖に炎症がある場合や出血がある場合は水酸化カルシウム単身を根尖の肉芽に置く”というように使っていました。

根管内の細菌を消毒する!というよりは、仮封からの漏洩で入ってきた細菌をストップさせる、そんなイメージだったと思います。

水酸化カルシウムは現在の根管貼薬剤が最適なものだと考えられていますが、
何しろ根管内にべったりつくと本当に取りにくく、いくらヒポクロを満たして超音波で洗浄しても隙間に入り込みなかなか完全には取れない気がします。
(なので2年目くらいからはカルシペックスはほとんど根管口にちょこっと置くくらいでしか使っていませんでした。)

きちんとした根管形成と洗浄で根管内の細菌や汚物をなるべく除去し、根管充填で細菌繁殖のための空間をできるだけ封鎖する!
というのが現在のエンドの考え方のようで、そうすると1回治療でもほとんど治癒することから感染が重度な症例を除いては必ずしも根管貼薬剤は必要ないとのことです。1)

また、水酸化カルシウムは難治性の根管に存在するE.faecalisに対する抗菌効果が不十分だという報告もあり、これに対してはヒポクロを正しく使用すれば有効とのことです。(海外ではクロルヘキシジンが使用されています)1),2)
※今日クラスメイトと話したところによると、スウェーデンをはじめ、チリも、イランも、クロルヘキシジンを使っているそうです。日本では粘膜に使用できないんだよー根管にも使ってない・・・というとみんなにびっくりされました。

水酸化カルシウムが有効だというのは間違いなさそうなのですが、
それよりもラバーダムの使用やカリエスの除去・適切な機械的根管清掃・化学的根管清掃・緊密な根管充填ができていることがまずエンド成功の第一条件であり、あくまでも水酸化カルシウムは補助的に使う。
適切な無菌処置や根管拡大や洗浄を心がけていれば水酸化カルシウムはエンドの成功をあまり左右しないうえに、除去が難しいので緊密な根充を妨げることさえある。というのが今の日本のエンドの考え方のようです。

さて、スウェーデンではどうなのでしょう。
スウェーデンでももちろん水酸化カルシウムは使われていますが、スウェーデンでは水酸化カルシウム(製品名はカラセプトCalasept。日本でよく使われているカルシペックスとほぼ同じ成分が入っています。つまり、水酸化カルシウム・硫酸バリウム・精製水です。)はレンツロを使い根管壁全体にいきわたるようにべったりと使うよう指導されます。
先生に質問してみると『正直なところ、水酸化カルシウムの必要性はきちんとした信頼できる研究が少ない(少しはあるけどかなり古い)ので何とも言えない。いまだに、1987年・1991年の水酸化カルシウムの有用性を報告する論文にのっとって使用が勧められている。Sos(厚生労働省)のガイドライン作成チームは論文を吟味するときにかなり厳しい基準で判断しているので小さい研究はすべてガイドラインに反映されない。いい研究も意見に取り入れられないことが多い。なので不確か。EUでは水酸化カルシウムを全く使わない国もある。』と言っていました。

厚生労働省のページによると、水酸化カルシウムの抗菌作用と、根管に残存している細菌の増殖を抑える効果のために水酸化カルシウムを根管壁すべてに使用しているようですが、抗菌作用はかなり弱いしE.faecalisに対する抗菌作用は不十分なのでより効果的な薬剤の研究(クロルヘキシジンやヨード)が進められているとのことです。
さらに、Sosのガイドラインによると
“Socialstyrelsens expertgruppsbedömning är att vid pulpanekros med apikal parodontit, såväl som vid övriga tillstånd som föranleder en rotbehandling, ger ett antimikrobiellt inlägg med kalciumhydroxid en viss bakteriereducerande tilläggseffekt utöver mekanisk instrumentering och spolning.”
『厚生労働省の専門チームの判断は、根尖性歯周炎を伴う歯髄壊死および根管治療を行わなければいけない状態の根管において、根管内の細菌の増殖を抑えるために、機械的清掃と洗浄の補助として水酸化カルシウムを使用する』
ということです。

日本もスウェーデンも、
『水酸化カルシウムを使用するべきかどうかははっきりしない!』
といった感じですが
どちらかというと根管形成・洗浄・根充に重きを置き、そこでなるべく細菌を除去し根充はできるだけ緊密に!!菌を閉じ込める!
水酸化カルシウムは補助的な役割しかないんだから、そのせいで緊密な根充を妨げるならなんなら使わなくてもいいんじゃないの?
仮封からの漏洩をちょっとブロックするくらいの意味で使えばいいんじゃないの?
水カルは有効かもだけど、きちんとエンドの治療やってれば結果はかわんないでしょ。
という日本のエンドと

いや、水酸化カルシウムに少しでも有効性があるなら使うべきだ!
補助的とは言え、使ったほうが安心だ!根管形成・洗浄・貼薬のトリプルアタックだ!(と思っているかわわかりませんが・・・笑)
効果的なものは全部やるべきだ!
というスウェーデンのエンド。

何事も慎重なスウェーデンらしい考え方なのかなぁ・・・なんて思ったりします。

個人的には、水酸化カルシウムをべったり根管壁につけると本当に取れないし、根管口だけに使用してもあまり患者さんの症状や根管内の状態に差はでなかった印象があるので
そんなに使わなくていいかなぁ、むしろ形成!!洗浄が大事!!!!!と思っていました。(しかも、パーフォレーションしている根尖孔外に水酸化カルシウムが押し出され急性炎症を起こした方を数回担当したことがあるので軽くトラウマです・・・)
ていうかそんな一生懸命やっても根管は複雑だし完璧に無菌にするなんて無理だよな。。。オペという手段もあるし、根管は自分ができるところまできれいにしよう。
という心境で診療しており、水酸化カルシウムは炎症の時に単味を根尖に置く、くらいでしか頼っていなかったのに
いきなりこれからの学校の実習で根管内にべったり。をやるのは少し気が引けますが・・・
まぁ免許を取ったら自分の判断と日本で学んだ臨床(もちろんスウェーデンの臨床と組み合わせて)をしたいと思います!

長くなってしまったので仮封の話は次回に。

参考文献
1), 小林千尋(2012)『新 楽しくわかるクリニカルエンドドントロジー』医歯薬出版株式会社
2), 阿部修(2012)『Evidence & Technique NiTiロータリーファイルを効果的に使う 実践歯内療法』医歯薬出版株式会社

2人とも私の憧れの先生です。
本は本当にわかりやすく、今でも気になることがあると読んでいます。スウェーデンにもきちんと持ってきました!エンド好きな人におすすめの本です!

KUT、2週間目・・・

毎日やることが多くてあっという間に時間が過ぎていきます。

最近はずっとモラル・倫理のお勉強・・・。
今まで当たり前に感じていたことも改めて、さらにスウェーデン語で学ぶとなんだか新鮮で新しい見方ができます。

患者さんと歯科医師の意見が衝突するとき、何を優先すればいいか。
そういう日々の臨床のジレンマを改めてディスカッションし、頭がこんがらがっています。
1年生のディスカッションを聞いたのですが、歯科の知識が全くないから臨床の倫理なんてきちんと話し合えるのかと思っていたのですが
もう1年生にして専門知識があるし、ディスカッションも論理的だしなんだか感動してしまいました。
歯学部生の中には衛生士さんの資格を持っている人も結構いるのでもうすでに歯科に対する考え方はしっかり持っている人もいます。
私が歯学部1年生の時なんてなーーんにもできなかったのに・・・。

私たちもグループワークでディスカッションを行うのですが、私たちの症例は

『定年になったばかりの甘いものが大好きな患者さん、彼の希望は抜歯してインプラントで1回で治したいけれど、歯科医師Sは根治してブリッジのほうが安くすむし歯も少しは残せるのでそちらをお勧めしている。歯科医師は患者さんの歯の状態・おすすめの治療をきちんと説明したうえで、フッ素治療・口腔衛生指導・食事の指導を行った。
患者さんはどうしてもインプラントで1回で治してほしい。
患者さんは甘いものをやめるのは無理だと言っている。
歯科医師Sはなにをするべきか。
また、患者さんと歯科医師S以外に関わってくる人物は誰か。』

実際はもっと詳しい症例なのですがざっとこんな感じの症例です。

これを倫理意思決定モデルというのに当てはめて問題を抽出し、まとめて答えをだす過程をプレゼンします。

私はケースをモデルに当てはめて考えるのが苦手なようでだいぶ苦労しています。
いままで自分も倫理の判断基準(感覚的な)で行動を決めていたのでこのようにきちんと言葉にしなければいけないのは一苦労です・・・

倫理の本を読んでいてよく目にするのが(さらには社会でよく耳にするのは) “Integritet” 英語では “Integrity” という言葉。
日本語では “高潔さ、誠実さ、真摯さ”と訳されるようですがなんかニュアンスが違くて、

“自分が自分の好きなように存在する権利”

みたいな意味なようです・・・。
例えば、『Man får inte kränka annan persons personlig integritet. (人は他人の”自分が自分の好きなように存在する権利”を脅かしてはいけない)』こんな感じで使います。
私の中では、スウェーデン人はIntegritetにものすごく敏感で、自分が自分であることをかなり大切にしているので
他人の意見を変えようとしたりするのを極端に嫌います。それはみんなそうですよね、きっと。
中にはIntegritetを乱用しすぎな人もいるようで、例えば
『子供が野菜は嫌いだからそれを優先してあげなきゃ。子供のIntegritetを守るために野菜はなるべく出さない!』こんな風に間違った方向に行く親もいるようです・・・。

たまに私がこの社会で感じる言葉に言い表せない違和感は、こういう”権利の主張の濫用”も原因の1つなのかもしれません。

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倫理以外にもレントゲンの法律を学んだり、急患対応について学んだりもしました。
レントゲンの法律は”SSM (Strålsäkerhetsmyndigheten)放射線安全局” で定められています。
レントゲンの機会がある場所にはRALFという責任者がいなければいけないのですが口腔内のレントゲンは普通の歯科医師が、パノラマにはパノラマの資格(面白いことに、パノラマ運転免許と言っています。笑)をもった歯科医師が、CBCTには専門医が必要になります。
その外にも、放射線を扱う建物の基準、レントゲン装置の基準、管理方法、被爆の上限、鉛のエプロンの使用、レントゲンホルダーの使用などがSSMによって定められています。
スウェーデンでは、各ユニットにレントゲン装置がついており、撮影する人は部屋の外に出て壁の後ろに隠れます。ドアは開けっ放しですが放射線は一定方向に進むのでそれで十分だそうです。さらに、患者さんも甲状腺を守る首周りのエプロンだけつけ、パノラマではエプロンなしで撮影します。パノラマの放射線は斜め上の方向に進むのでエプロンの意味がないとのことです。
最初はいろいろカルチャーショックでしたが、理論を習ううちに納得してきました。でもまだ少しなれません・・・。放射線に関していろいろあった日本で生まれたので少し敏感になってしまいます。。。

救急ではPulできた患者さんの対応、ステップワイズエキスカベーションを学びました。時間がない時には歯冠の歯髄をとることは常識ですが、こちらの救急では髄腔開拡をしたらそのままZOE(酸化亜鉛ユージノールセメント)を詰めてそのままグラスアイオノマーかIRMというユージノール系のセメントでふたをするとのこと。綿球はいれない、何故なら歯冠が破折したときに汚れがたまるから・・・らしいです。
日本ではそもそもユージノールセメントはほとんど使わなかったし、基本的にエンドをする歯は咬頭を落としていたので破折などはあまりなかったのですが・・・こちらはそのままCRで治すことが多いので咬頭を落とさずかみ合わせをばっちり与えてることもよくあります。

ステップワイズはこちらでは本当によくやられている治療なのですが、前までは残存カリエスの上に水酸化カルシウムを引いていたけれど今では何も引かずにグラスアイオノマーor IRM or biodentineを密に詰めて4~6か月待つ、Biodentineの場合は全て削らずに上からCRで大丈夫とのことでした。
『シールドレストレーション(カリエスを取りきらないまま最終修復をする方法)はどうですか?』と聞いたら、
学生には勧めてない、とのことでしたが私はこっそり『Biodentineとらないでその上からCRするならシールドレストレーションと変わらないじゃん。』と思いました。
ただ、先生も実際はカリエス残しても大丈夫だよね、密に詰めてれば・・・とつぶやいていたので臨床現場では行われているのでしょう。
Sos(厚生労働省)のガイドラインでは、ステップワイズは高いエビデンスを持つ治療とされているのに対し、シールドレストレーションはエビデンスが不十分という記載がされていました。

これからスウェーデンの歯科の点数の取り方について学ぶので楽しみです!