IVO。Lex Maria。

仮封の話をする!と意気込んでいたのですが
たまたま今法律の授業ばかりを受けているので今回はそれについて紹介したいと思います。

スウェーデンで医療にかかわると必ず出てくるIVO、Lex Mariaを紹介したいと思います。
IVOはInspektionen(監査) för Vård(医療) och Omsorg(ケア)の略で、医療を監視する政府機関です。
例えば患者さんが歯科治療や歯科医師に不満だったり、間違った診断をされたと思ったらIVOに連絡します。ほかの業務もあるのですが、簡単に言うとIVOは医療の苦情窓口のようなところです。

日本では患者さんは苦情をどこに訴えればいいのかネットで調べてみたところ、歯科医師会だったり、相談センターだったり、弁護士だったりとイマイチきちんと定まっていないようでした。
私のイメージでは患者さんは医療に不満を覚えると『訴えるぞ!』といって弁護士さんに相談するケースや、苦情はあるけれどどこに訴えればいいかわからないので違う歯科医師に相談する、もしくは我慢して苦しんでいる・・・という感じでした。
苦情を訴える患者さんに対してモンスターペイシェント扱いする歯科医師や
それが怖くて何も言えない患者さんもたくさんいると思います。
そして残念ながら実際に歯科医師が最善を尽くしたとしても、思い込みや勘違いからなんでもかんでも苦情を言ったり訴えるぞと脅してくる患者さんも実在します。
なので、医療従事者・患者の間に入り客観的に判断してくれるIVOはありがたい(そしてちょっと恐ろしい)存在なのかなと思います。

基本的にIVOは
『医療機関がきちんとエビデンスに基づいた医療を行っているか』

『医療が安全に行われているか』
を監視しています。

歯科に関係する業務は
1、患者からの苦情の受付
2、医療従事者のコントロール
3、医療機関の業務や活動のコントロール
4、Lex Maria
の4つにわけられます。

患者さんからの苦情をうけた歯科医院は、カルテを開示し
きちんとカルテが書かれているか・レントゲン・医療行為が正しく行われていたかをIVOがチェックします。
カルテは、患者安全法・患者情報法によってきちんと記載されるべき内容が定められています。
もし患者さんが医療行為によって損害を受けた場合は、(国民歯科の場合は) LÖF(Landstingens Ömsesidiga Försäkringsbolag )という県の保険会社が患者さんにお金を支払ってくれるのですが、LÖFもカルテを確認して支払うべきなのかを見定めるのでカルテはとても大事です!

2の医療従事者のコントロールは、上記のように苦情を言われた医療スタッフや料金の取り方がおかしかったり、治療に偏りがある歯科医師が目を付けられチェックされます。
そのあとはHSANという”資格を持つ医療従事者”のための裁判所のような機関に送られ、免許はく奪・もしくは3年間のテスト期間の必要性や薬の処方の権利のはく奪などを判断されます。テスト期間中は、IVOの監視下で条件を満たすように仕事をしなければなりません。

ちなみに2017年に免許をはく奪された歯科医師は7人いるそうで、その例を見せてもらいましたがひどかったです。
正直、医療というより暴力に近いような治療でした。
7人の歯科医師がどこの国からいているのか、スウェーデン人歯科医師なのかという情報は教えてもらえませんでしたが、IVOで働いている方の講義でちらっと
『EUの他の国は全く基準が違うのにテストなしで働けるし、EU以外の国では健康な歯に予防と言って抜髄したりクラウンをかぶせるから・・・』とぼそっとつぶやいていたのでスウェーデンで教育を受けた歯科医師たちよりも外国人歯科医師のほうが多いのではないかという予想ができます。しかし真相はわかりません。

EUの国ではスウェーデンと全く違うモラルで働いていたり、抗生物質の使い方もまるで違うのにテストを受けずにいきなり免許が取れてしまうのでそれは良しあしだなと思います。
しかし、同じコースを受けているシリアの子たちは、歯科医師は神様扱い。お金も儲かるし、位が高い仕事だからいまだに患者さんよりも歯科医師のほうが立場が上で説明とかあんまりいらない!と授業中に言っていたので
歯科医師の立場がスウェーデンとまるっきり違うのにテストだけを受けていきなり働く人もいるということに少し不安を覚えました。
日本とスウェーデンは患者さんと歯科医師の立場が似ているので(中には患者様なんていう歯科医院もあるみたいですが、歯科医師過剰の昨今それはしょうがないのかもしれません・・・)私はモラルや倫理の授業を聞いていても日本の大学で習ったことと重なってやりやすいです。
学生時代に叩き込まれたインフォームドコンセント・共感的態度・治療の説明の仕方などは世界にも通用することだったんだとありがたく思います。
さらに、IVOの人に『日本の歯科の水準はすごく高いから問題ない』と言われたので嬉しかったです。

薬を処方する権利は、麻薬や依存性のある薬を自分に処方したり患者さんに過剰に処方してはく奪されてしまうようです。

3の医療機関の業務や活動のコントロールは、医療機関がきちんと衛生を保っているか、医療行為に必要な機械があるかなどをチェックされます。
例えば、オートクレーブがなければ衛生を保っているとは言えないし、レントゲンの機械がなければきちんとした診断ができません。そいいう場合には期間を定めて期間内に必要な道具や機器をそろえ、改善を示さなければなりません。
それができない場合は、器具を買うよりも高い罰金を支払うことになるそうです。

4のLex Maria(レックスマリア)は
医療従事者がなにかインシデントを起こしたときに医療機関自身がそれを通報することです。
これは法律で義務づけられています。
なぜLex Mariaというかというと、1936年にストックホルムのマリア病院で、スタッフが4人の患者さんに麻酔薬の代わりに間違って消毒薬を注射し、その4人の患者さんが亡くなってしまったのを病院自身が通報したことから来ています。
Lex MariaによってIVOに通報した医療機関は、調査され同じ過ちを繰り返さないようにIVOとともに医療機関内で対策を考えます。

書いていて思ったのですが、IVOは保健所と相談センターと厚生労働省がミックスされたような機関ですね。

管理体制がなかなかしっかりしているスウェーデンですが
このようなことができるのはやっぱり人口が少ないからなのでは・・と思わずにはいられません。

将来IVOとあまり関わらないように・・・気を付けたいと思います。

Author: Y

2012年に都内歯科大を卒業。 その後しばらく働き、 2016年2月にストックホルムに移住。 スウェーデンの歯科に興味を持ったのは大学3年生のカリオロジーの授業のとき。 スウェーデンの歯科の実態が知りたい!

1 thought on “IVO。Lex Maria。”

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *