フッ素は危険なの?

ご無沙汰しています。

最近はテストにデンタルショー、論文で毎日なにかと忙しくブログまで手が回りません・・・
来週はエンドのテスト。さすがに専門分野なので過去問を見てみると内容はとっても簡単に感じたのですが、問題はスウェーデン語です・・・

9ページ、40問の全て筆記なので日本語では大丈夫でもスウェーデン語では時間がかかってしまい大変です。きちんと勉強しなければ・・・

さて、書きたいことはたくさんあり
デンタルショーの様子、講義の内容、さらに最近始まった救急外来の話、レントゲンの話なんかがたまっているのですが今日は『フッ素』について書きたいと思います。

虫歯の予防に効果絶大!!のフッ素ですが・・・
実は2015年に『フッ素に対する心配の声が上がっている』という記事が新聞やニュースに紹介されました。

歯科医師新聞の記事です。コチラ
2015年にSNSを通じてフッ素の危険性が取り上げられ拡散。
そこで特に子供をもつ方々が心配し始め、当たり前のようになんの疑いを持たずにフッ素を使っていた歯科医師たちが心配する親の質問にきちんと答えられなかったことからさらにフッ素に対する不安が大きくなってしまった、ということです。

実はこの内容、私が語学学校に通っていた際のプレゼンのテーマの1つにしました。
(医療系語学学校に通っていたので、自分の専門からテーマを選んで行うプレゼンがありました。)
そのプレゼンをするときにいろいろ調べた内容を書きたいと思います。

フッ素の不安につながった原因は、
1、フッ素などの化学物質とADHDや自閉症、ディスラクシアと診断された子供の数に強い関連を示す研究がある
2、アメリカの水道水のフッ素が高濃度の地域で行われた研究で、特に若い男の子の骨肉腫のリスクを上げたり、骨の質を下げるという研究がある
ということをSNSに誰かが載せたら、それがいろいろ形を変え、大げさになり、尾ひれはひれがついて拡散され、さらに歯科医師の情報提供不足+患者さんが『フッ素のカリエス予防効果』を疑問視するようになり、不安が高まったということらしいです。

フッ素は70年以上も虫歯予防に使用されており、たくさん研究もされ
十分にエビデンスがあるものです。
スウェーデンの厚生労働省(Sos)でもカリエスに対して最高レベルで推奨されています。
1のADHDなどの問題に関しては, スウェーデンのフッ素の研究者が見解を出しており10 mg/l の高濃度のフッ素なら起こりうるかもしれないが、スウェーデンでは水道水のフッ素濃度の上限は1.5mg/lであり、ストックホルムでは0.2mg/lのフッ素しか含まれていません。
さらに、1の研究は研究方法に問題があり信頼性がないとのことです。
2の骨の問題は、研究者によると水のフッ素濃度が高い地域(研究では6 mg/l以上のフッ素濃度)の住民はたくさん水を飲むと影響があるかもしれないとのことですが通常のフッ素の使用では骨に影響はでることはないとしています。

なので、スウェーデン、もちろん日本でも、通常の生活を送り普通にフッ素を使用している方は何も問題はありません。

しかしフッ素には有名な副作用、『エナメルフッ素症(斑状歯)』と『フッ素中毒』があります。
フッ素症は、以下の表のように1 mg/l以上のフッ素でリスクが出てきますが

スウェーデン、日本で水道水を飲んでいる場合はほぼ問題がないといえます。
ただし、井戸水などを飲んでいる地域ではフッ素の摂取量が多かったりするので、患者さんにはきちんと説明します。
(患者さんの問診票に、井戸水を飲んでいるかどうかという質問事項があります。夏の間にサマーコテージに滞在し井戸水を飲む方も結構いらっしゃいます。子供には特に注意を促します)

妊娠中の方、1歳未満の子供を持つ人は地域によっては、無料で水質のフッ素濃度調査をしてもらえるようです。その他の人は、マックスで150クローネにて調査してもらえるとのことです。

もう1つの重要な副作用、フッ素中毒は
子供がフッ素入りの歯磨き粉を食べてしまった!タブレットを食べてしまった!
洗口液を飲んでしまった!そんなとき起こりうる中毒ですが
症状としては悪心・下痢・嘔吐などです。
体重(kg) × 5 mg以上摂取すると症状が起きるようです。
これは、10 kgの子供が子供用歯磨き粉を一本丸まる、またはフッ素のタブレットを数百個食べてしまうとフッ素中毒になってしまうということです。
最悪の場合(体重×30 mg~60 mg)は死に至ると考えられますが
10 kgの子で考えると子供用歯磨き粉6本~12本なのでかなりの量といえます。
(子供がフッ素を飲んでしまったときの対処法はネットに書いてあります。)

以上のことから、フッ素の通常の使用・さらにはスウェーデンまたは日本で生活している分にはあまり心配しなくて大丈夫、といえます。
これから”フッ素恐怖症”の患者さんに会うこともあるかと思いますが、歯科医師としてきちんとした情報を伝えたいと思います。

ちなみに、KUTに入る面接で面接官に『フッ素恐怖症の患者さんが来たらどうする?』と聞かれたので、ラッキーと思いながら答えました。
しかしそのあと少し話し合い、患者さんに正しい情報を伝えるのは私たちの義務ですがどうしても使いたくないという患者さんに無理矢理使わせるのはよくないので
引き続き説明するとともに、フッ素なしでできる最大限の予防を伝える必要がある。そしてフッ素は薬剤なので、恐怖症でない方にも使用を気を付けるようにきちんと伝えるのが大切、という結論に達しました。

さらに補足で、欧州って皆さん硬水というイメージがあるかもしれませんが
スウェーデンの水の80%は実は軟水です。
東京の水の硬度が約65 mg/l、私が今住んでいる地域の硬度は66 mg/lのようです。(私が計算したので100%あっているとは言い切れませんが…。)
ストックホルムの平均は約100 mg/lで中軟水、ウプサラという地域は硬度が高く300 mg/lとばらつきがあります。日本の平均硬度は50 mg/lです。

私の出身地(東京)のフッ素濃度を調べたところ、0.11 mg /lでした。スウェーデンも特にフロリデーションは行っていませんし、スウェーデンの水道局のホームページによると、過去に一度も行われたことはありません。
よく『スウェーデンといえばフロリデーション?』と聞かれることがありますがそれは違います。
フッ素を水道水に添加するのは、許可を取らずに薬を飲ませるようなものなのでやっていない、と水道局に記載されていました。

硬度(地域によっては)もフッ化物もあまり大差のないスウェーデンと日本の水ですが大きな違いの1つは塩素の含有量です。
スウェーデンの水は塩素がとても少ないので、日本の水道水を飲むと塩素の味に気が付くようになりました。

水の話になってしまいましたが・・・

スウェーデンの市場で出回っているたくさんの飲み物はミネラルウォーターから作られいるものもあり、そうすると自然と少しだけフッ素濃度が高くなるようです。
しかし、日本で売られているミネラルウォーターにもフッ素濃度が普通の水道水より高いものがありますので、とくに気にしないで生活していればスウェーデンと日本で特にフッ素の摂取量はそれほど変わらない気もします。

スウェーデンの水道水のフッ素含有量の認められている上限は1.5 mg/lですが、ストックホルムの値は0.2 mg/l以下、ウプサラは0.9 mg/l、
日本のフッ素含有量上限が水道局HPによると 0.8 mg/l、私の出身の区では0.11 ml/g。
う蝕予防に効果があるフッ素の量は1.5 mg/l以上とされているようなので、スウェーデンの水道水を飲んだところでう蝕予防の効果はありません。

例外で、井戸水を使用しておりその水のフッ素濃度が高かった場合、子供たちには以下の注意が適応されます。

ただし、ストックホルムで普通に生活している分にはあまり井戸を使っている人はいないのであまり関係がなさそうです。

ということで、スウェーデンの虫歯予防の効果は水道水とは一切関係ないので
やはりフッ素の日常での使用方法によるものだといえるのではないでしょうか。

フッ素の使用にはガイドラインがありますので、次回!(気力があったら)そちらも紹介していこうと思います!

エンド後の仮封について。

お久しぶりです。
10月後半に親友の結婚式のため5日間という短い時間でしたが日本に帰国していました。
Finnairだったのですが、行きはJALの共同運航に、帰りはエコノミーコンフォート・ビジネスクラス(45分だけですが)にアップグレードされたのでとても快適な空の旅でした。

さすがJAL、ご飯がおいしくサービスも最高、さらにはトイレもなんとウォシュレット、窓はボタンで透過光量が変わるタイプのもので終始感動しっぱなしでした。(JALには十数年ぶりに乗りました。)
帰りも快適であっという間の9時間半で、飛行機恐怖症の私ですが、飛行機にいいイメージを持つことができました。
残念ながら直行便はないのですが、スウェーデンからフィンランドは45分くらいですしフィンランドから日本も9時間~9時間半ほどなので実は結構近いです。

日本とスウェーデンは遠い・・・なんてホームシックになるたびにメソメソしていましたが今回の旅で『いつでも帰れるし、そんなにつらくない距離・・・なんなら5日間だけでも結構楽しめる』と思えたので気が楽になりました。(問題はお金がかかることですが・・・)

さて、今回はエンド後の仮封について説明したいと思います。

エンド後の仮封は、私が働いていたところではだいたい
綿球→キャビトンもしくはキャビトンEX→場合によってグラスアイオノマー
でした。
キャビトンは水硬性セメントで酸化亜鉛 硫酸カルシウム 酢酸ビニル樹脂が原材料とのことです。
皆さんご存知のように、唾液や水分で硬化する使いやすい材料で私もエンドの治療時には毎回使用していました。

スウェーデンでは、私が今まで見た限り・または大学で習った限りではキャビトンのような水硬性セメントを使用したことがありません。(授業では出てきましたし、使っている先生もいるようですが)
その代わり水酸化ユージノールセメント(私たちはZOE、ソーエと呼んでいます。)をかなり使用しています。仮封を取るのも超音波ではなくタービンです。

スウェーデンで使われる水硬性セメントにはユージノールの入っていないCavitという製品もしくはColtosolという製品があります。
しかしどちらも硬化時に吸水膨張し、CavitではZOEに比べて2倍・Coltosolでは17~20 vol%膨張するようです。

この吸水膨張は歯の破折や亀裂の大きなリスクになり、さらに膨張は咬合力によりさらに大きくなります。そのため、Coltosolは仮封などに使用されるべきではないという報告もあるようです。
Cavitに関しては気を付けて使用することが勧められているようです。

グラスアイオノマーは封鎖性があまりよくなく、EDTAなどの洗浄により象牙質の表面において、グラスアイオノマーが歯質にくっつくためのイオンが減ってしまうといわれています。
さらには硬化時の水分や乾燥に敏感で、うまく扱わないと亀裂が入ってしまうリスクが高まるそうです。
しかし、機械的性質には優れています。

そして・・・私が日本では常に使用していた綿球。
これはスウェーデンでは(カロリンスカでは)絶対に使わないように習います。
なぜ!!
根管に仮封材はいっちゃったらどうすんの!
取りにくいじゃん!
と思ったのですが、それには4つ理由があって
1、仮封の厚みが減ってしまい、漏洩のリスクになる。
2、綿球が柔らかいので咬合の度に仮封材が沈み込み仮封の破折や漏洩につながる
3、綿球の繊維が少しでも仮封の外に出ていたらそこから漏洩する可能性がある
4、側枝や髄管などから綿球を通して漏洩する可能性がある

ということでした。

いままで綿球を使っていてそれほど問題が起きたことがなかったので
そうなんだ・・・という感じだったのですが、確かに言われてみれば漏洩のリスクは大きくなりそうです。
ただ、こちらのZOEを治療後の根管にもりもりつめて、次回来院時にすべてタービンで取っているのをみると、パフォらないかちょっとひやひやしてしまいます。
歯質を余分に削ってしまうリスクもあるので気を付けなければいけないと思いました。

水酸化カルシウムもたっぷりつめて、さらにはしっかり仮封をし漏洩のリスクをなるべく減らす!という感じでしょうか。
危ないことは絶対に避けるのがちょっとスウェーデンらしくて少し笑ってしまいました。
治療を見ていると、仮封を取るのにも時間が結構かかっています。(エンドに毎回1時間半くらい予約をとっているのでそれでも大丈夫なのかもしれませんが。)
仮封を取りきらないまま治療をしている先生もいたのでそしたらいくら仮封をしっかりしても水酸化カルシウムをすごく詰めてもダメなんじゃないか・・・と思ってしまうのですが・・・。

過去に仮封の漏洩でSinustractが消えなかった患者さんがいたので
仮封の大切さは身をもって知りました。
なのでそれを忘れないでこれから治療をしていきたいと思います。

まとめると、
仮封は3.5mm以上必要。
ZOE、水硬性セメント(Cavit)は機械的性質はあまり優れていませんが封鎖性はあるので短期間の仮封にはOK。しかし長期間仮封が必要になる場合や大きな窩洞の場合はZOEもしくはCavitの上にIRMセメントもしくはグラスアイオノマーを使用し二重仮封する。(膨張するので低めに詰める。)
綿球は漏洩のリスクを上げるので使用しない。

というのがカロリンスカでのやり方のようです!