おばあちゃんのこと。

今回は、歯科にはあまり関係ない内容ですが
書き記したいことがありましたのでブログを書こうと思います。

『スウェーデンは寝たきりがゼロ』や『高齢者のケアがしっかりしている』
という話は有名で、よく日本のメディアでも取り上げられたりするのを見ます。
口腔内が亡くなるまできちんと保たれているなんていう話も聞くし、健康寿命と平均寿命の差がほとんどないと言われています。
福祉がしっかりしていてゆりかごから墓場まできちんとサポートしてくれるなんてイメージがついていると思います。

私は、これには賛同できません。
何故なら、私の夫のおばあちゃんが寝たきり生活を経て先日亡くなったからです。

今回は、私が見たおばあちゃんの状態の変化・スウェーデンの老人ホームについて、そしておばあちゃんの思い出をつづりたいと思います。
(私と家族が経験したことですので、必ずしもスウェーデン全体がそうではないということを前提にお読みください。)

私がおばあちゃんに出会ったのは2010年。2009年におじいちゃんが亡くなり1人暮らしが始まったばかりでした。
83歳で、すごく元気でした。スウェーデン語が話せない私に英語でいろいろ教えてくれ、白いきれいな髪の毛と真っ青な透き通った目がとても美しかったのを覚えています。若いころの写真を自慢げに見せてくれて、真っ黒な髪の毛と青い目で人気者だったことや、英語の先生をやっていたこと、ステノグラフィもできドイツ語も話せたこと。イギリス留学が決まっていたのにおじいちゃんと出会ってしまい留学を諦めて若くして結婚したことを語ってくれました。
日本で2013年前半に挙げた私たちの結婚式は、体が不自由になりかけていたので断念したのですが、いつも行きたかったと言ってくれたし写真を飾っていてくれました。

2013年後半ごろから発言や行動が変化し始め、料理や掃除ができなくなってしまったのでHemtjänst(訪問サービス)を頼んだのですが、そのサービスの方はスウェーデン語があまり話せずコミュニケーションが取れず、スーパーで買ったお弁当的なものを温めてくれ、掃除をしてくれて帰っていったそうです。
それでもおばあちゃんはその人が来るのを楽しみにしていたそうです。
2014年ごろから徘徊行動が見られるようになり、ついに老人ホームに移ることになりました。ただ、コミューン運営の老人ホームが満室のためそこが空くまでプライベートの老人ホームで暮らすことになりました。

そこは本当にひどくて、
・介護士がスウェーデン語でコミュニケーションが取れない
・介護士が宗教上の理由で女性に触れない。入居者の家族とも握手できない。目を合わせない
・介護士が入居者と一緒にソファーに座ってケータイをいじっている
・入居者は車いすにずーーーっと座ったままぼーっとテレビを見ている

こんな感じだったので、おばあちゃんは一気に刺激がなくなってしまい急激に認知症が進みました。
さらに、おばあちゃんが転んでけがをした際もすぐに親族に連絡がいかず、病院に運ばれホームに帰ってきて、義理の母がけがをしているおばあちゃんに気づき介護士に尋ねてやっとけがをして病院に運ばれたということを知ったそうです。
さすがにひどいので義母はIVOに通報しました。(そしておばあちゃんが亡くなる1週間前にやっとIVOから返事がきました。2年以上・・・)
2016年初旬、やっとコミューンの老人ホームが空いたので引っ越し。
コミューンの老人ホームは大きくてきれいで職員さんたちもみんなフレンドリーでスウェーデン語が話せる人たちでした。アクティビティやイベントも少しあったようですし、友達もできたとかで少しずつ元気を取り戻しました。ただ、一つ心配だったのがおばあちゃんが食事をする際にずっとゴロゴロ言っており飲み込むのにすごく時間がかかっており嚥下機能の低下がかなり疑われました。でも、ストックホルムでは摂食嚥下という科目がありません。嚥下の評価やトレーニングなどは一切行われていなかったようです。

少し元気を取り戻したおばあちゃんを見てみんなが安心していたのもつかの間、おばあちゃんは転倒して大腿骨を骨折してしまいました。手術をし戻ってきたのですがリハビリは思うように進まず(介護現場はストックホルムでもものすごく人手不足で、リハビリをする時間はあまりとれていないようだと義母が言っていました)どんどん歩けなくなり、ご飯も食べられなくなっていきました。そして去年再び骨折。人手がないから1人1人をサポートするのは無理だし、これ以上リハビリをしたり歩かせるのは危険ということでそこからは完全に寝たきりになりました(日中ベッドで過ごしていたようです)。ケアやリハビリは行われず嚥下機能がどんどん弱っていくのが目に見えてわかりました。
口腔ケアも十分行き届いておらず、亡くなる直前はインプラントブリッジの上部構造が取れインプラントも抜け落ちカリエスや歯肉、衛生状態も悲しくなるような状態でした。何で私が何かできなかったのかと後悔しました。誤嚥性肺炎になっていたかもしれません。何も検査をしないので何もわかりませんが。
そして、そのままどんどん弱っていき、つい先日突然気絶。義母が訪ねた時には、ちょっと気絶してしまっただけで理由はわからないといわれ、その次の日にホームからいきなり義母に『もう最期の時です』と連絡が来ました。そしてそれから2日後に亡くなりました。

ここのホームでは、延命治療をしないのが当たり前で、危篤状態になってからは『もう最期の時です。静かに命が終わるのを待ちましょう』と言われ
水も栄養も薬も症状緩和のもの以外は一切中止し、静かにおばあちゃんが息を引き取るのを待ちました。人の自然な人生の終わり方を見た気がしました。
延命しないのは良い選択なのかもしれないと思いました。
義母は、のどが渇いているかもしれないから水くらいはあげられないのかと言っていましたが看護師さんが、もう水は体が受け入れません。そのまま何も与えずに死を待ちましょう。と言いました。
看護師さんが何度も何度も『彼女のvälbefinnande(Well being、幸福な状態)を尊重して・・・』とつぶやいていましたが、それがなんだかむなしく聞こえました。彼女に一体何がわかるのだろう、と思ってしまいました。
延命治療をしない、という観点から言えば寝たきりで延命されている状態はほぼないとはいえると思います。(しかし、おばあちゃんの施設と家族の職場の状況しかわからないのでスウェーデン全体がどうなっているのかはわかりません。)
生命が静かに閉じていき、体の機能がだんだん停止していくのを感じました。
点滴などにつながれて延命するよりも良かったのかなとは思いましたが、この状態になるまでになにかできたんじゃないか、と後悔しました。
私は、これが自分の家族に起こったときにすんなり受け入れられるかわかりません。私だって延命はしてほしくないけれど、そうなる前に止められるならリハビリやトレーニングをして友達と歌ったりアクティビティをやって楽しんでできるだけのことをしてから最後の時を迎えたいです。
ここの老人ホームのように、毎日平たんに過ごし、機能を回復する訓練などもなく、弱ったら最後の時が来るのを静かに受け入れる・・・というのはどうしても・・・。
嚥下訓練は、もちろん状態にもよるけれど
おばあちゃんの場合は食欲もあったし食べるの好きだったし、少しは改善につながったかもしれません。
口腔ケアをもっとしていれば、なにかが改善されたかもしれません。
私がこちらで高齢者歯科の授業を受けた時、嚥下についてはどうか。訓練や検査はするのかと尋ねたら『嚥下機能?なにそれ』みたいな感じで答えられたのでこっちは摂食嚥下機能学というのはあまり考えられていないのかもしれません。
口腔ケアだって、インプラントのブリッジが取れてむき出しになったインプラントが歯肉から突き出ていたのに誰もおばちゃんを歯医者に予約してくれず、義母が訪ねたら『ご自分で歯医者を予約してください』と言われたそうです。
(授業では、施設が歯科医院に連絡をとり病院歯科に連れて行ってくれるか、歯科スタッフが必要に応じてきてくれると言っていました。さらに、衛生士さんがかなりお世話をしていると習いました。しかも、今度歯科実習と称して大学でおばあちゃんが住んでいた施設に見学に行きます。おばあちゃんが十分な口腔ケアを受けていなかったのを知っているので怒りがわきました。)
そういえばなくなる2日前に衛生士さんが来てくれました、とスタッフが言っていたけど来て何をしたのだろう。口腔内はなにも改善されていなかったです。

歯がたくさん残っているから長生きできる?
本当にそうですか?
歯がたくさん残っていたりインプラントがたくさんある口腔内のほうが、ケアができなくなった時に大変ではないですか?
今、ここでは歯がたくさん残っているから起こる問題に悩まされているように感じます。

実は私の家族には介護士をしている子がいます。
彼女はいつも現状を教えてくれますが、私はここで最期の時を迎えたくありません。
認知になって母国語しか話せなくなったり、誰も身寄りがなく1人で亡くなる方、末期がんの最期、入居者の歯磨きがちゃんとできないこと、そんな話や愚痴をたくさん教えてくれます。もちろんそういう経験をしていない方もたくさんいるとは思いますしスウェーデンで働く介護士の方たちも必死に働いてくれているのは理解しています。とんでもない人手不足に陥っているのも十分知っています。
でも私が見たこと、家族が教えてくれたことを聞くととてもじゃないけどここの高齢者ケアが日本よりも特に進んでいるとは思えません。
大学で先生が良く言っているFriska blir friskare, sjuka blir sjukare(健康な人はより健康に、病気の人はより病気に)というのは本当にそうで、ここは健康な人にはいい社会だけど病気になると歯止めが利かないというイメージです。そしてあきらめも早い。

実は私の祖母は夫のおばあちゃんと同い年、同じ認知症を抱えています。しかし、私の祖母はデイケアに通いはじめ、認知はもちろんよくなりませんが今も状態を保っており元気です。楽しんでアクティビティや嚥下体操などをやっているようだしスタッフさんが施設での様子も事細かにノートに書いてくれます。運がよかったのは十分承知の上ですが。
そんな同い年で、状況が似ていた2人のあまりの違いに、よりショックを感じているのかもしれません。

もう後悔したってしょうがないことなんてわかっていますが、それでもおばあちゃんが少しでも元気になるために何かできたのではないかと思ってしまいます。
おばあちゃんがどんどん弱っていくのを諦めて自然に任せるのも1つかもしれませんが、うちの祖母みたいに毎日アクティビティをやり歌ってご飯を食べられるように楽しく訓練してなるべく元気でいられる状態を保つことだって選択にあってもいいのにと思っています。少なくとも、義母はそれを望んでいました。いつも『人手不足なのはわかるけど、もう少しなんとかならないのか・・・』と言っていました。

介護・そして医療にかかわる人材が増えて、スウェーデンが本当に平均寿命=健康寿命になるように高齢者のケアがもっと進むように心から願います。
日本から、摂食嚥下の先生に来てもらいスウェーデン知識を広めていただきたいと思いました。

最後に歯科新聞の記事を紹介して終わりにします。
リンクはコチラ(スウェーデン語です)
タイトルは
“Katastrofal tandhälsa hos äldre på sjukhem”
施設に住む高齢者の歯の健康の大惨事

スウェーデンで行われた21000人の施設に住む高齢者を8年間追った研究によると、5人に一人が無歯顎、歯がある人においては3人に2人はカリエスがあります。平均で1人5歯で、それは入居者すべての歯の23%です。
これは歯の健康の観点から許容できない数字であるというだけでない、と研究者は言います。このような患者さんのグループにおいては歯の状態が悪いと栄養摂取や全身の健康、健康に関する生活の質が悪化すると示されているからです。さらに、歯科医療従事者による口腔衛生ケアは歯肉炎を減らし口腔衛生を改善し、このような患者グループの死因の多くである医療・介護関連肺炎を減らすことができるということが示されています。
~中略~
研究者によると、歯科医療はこのような高齢の患者さんたちにより焦点を当て、患者さんたちの最期の時の口腔健康関連のQOLを向上させなければならない、ということです。

もう1つ、コチラです。
Tandvårdspersonal i äldreomsorgen kan rädda liv
高齢者福祉において歯科医療従事者が命を救える

これはまとめだけ紹介します。

スウェーデンのメタ分析において、病院や施設における歯科医療従事者による歯科医療の提供は、患者さんが肺炎で亡くなるリスクを減らせる ということが示された。しかし、看護師による歯科医療の提供ではリスクは減らないということも示された。

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つまり、歯科医療従事者は歯科医療を高齢者に提供することの大切さが示されたということです。
人生の最後においては、たかが歯・・・となるかもしれませんが
それでも私はおばあちゃんのいい治療がたくさんされた口腔内をなるべくきれいに保てたらよかったのに・・・と思いました。

私にできることは少ないかもしれませんが、歯科医療従事者としてこれから少しでも高齢者施設の入居者の口腔衛生状態の改善に何か貢献できればいいなと思います。
スウェーデンに住む人たちはどんどん残存歯が増えインプラントも多く埋入されています。その口腔内をケアする方法を考えていかなければいけない、と強く思いました。

追記
スウェーデン在住のアンダーナースの方のブログがスウェーデンの介護の現状を伝えてくれていますので紹介させていただきます!
KOKEMOMO sweden
スウェーデンの老人ホームで働くということ
スウェーデンの老人ホームで働くということ/その2
スウェーデンの老人ホームで働くということ/その3

コメントの質問に対して・・・

ありがたいことに、ブログを読んでいただいた方からいくつかの質問をいただきましたので答えられる範囲で答えていきたいと思います!
嬉しいです!ご質問ありごとうございます。

では早速・・・

1、スウェーデンの歯科医師免許は更新制なのでしょうか?

スウェーデンの歯科医師免許は更新制ではありません。さらに、日本と違って国家試験もありませんので、大学の卒業証明をSocialstyrelsen(厚生労働省)に送り免許を取得します。ただ、免許をはく奪されることはまれにあります。スウェーデンで医療の問題が起きると患者さんがIVO(Inspektionen för vård och omsorg・・・Inspektionen(監査) för Vård(医療) och Omsorg(ケア)の略で、医療を監視する政府機関です)に通報し、必要に応じてHSAN(Hälso – och sjukvårdens ansvarsnämnd 医療機関責任機関)と呼ばれる医療の裁判所のような機関で免許のはく奪をするか、いわゆる試用期間(態度が改善されるかを試す)を設けるかの判断がされます。詳しくはコチラをご参照ください。

2、1980年頃に東京医科歯科大の総山先生が、「スウェーデンの歯科医には、定期的なクオリテイチェックがある」と述べておられていたのですが、現在はいかがでしょうか?

例えば、中国やおそらくロシアのように歯科医師のクオリティが国家的なテストなどで定期的にチェックされるということはありません。(中国の件は上海出身のクラスメイトから、ロシアの件は歯科医師に関しては不明ですが、医師の友人から医師は更新制ということをききました)
ただ、スウェーデンの歯科治療に関するナショナルガイドラインは定期的に更新されますし、なにかおかしい治療をして保険の取り方がおかしかったりするとIVOがチェックするようです。でも日本も保険の取り方がおかしかったりするとチェックされると思います。定期的にガイドラインのエビデンスが見直され、全国でだいたい同じ基準に基づいて治療するのでそういう点では知識のクオリティ維持にはつながるかもしれません・・・

3、「金パラによる修復は、先進国では日本だけ」とよく言われますが、スウェーデンの患者の口に「銀歯」を見ることはないのでしょうか?

銀歯を見ることは稀です。でも、それには理由があると考察しています。
スウェーデンでは日本のような”保険制度”がなく(ある一定の料金を超えたら、割引されます)、メタルボンドクラウンで補綴してもセラミックで補綴しても、銀歯で補綴しても基本的にはあまり値段の差がありません(医院で値段を決めることができるので、医院によっては若干材料によって値段に差をつけているところもありますが)。クラウン1本だいたい6万以上はします。銀歯を選んでも高額なら、銀歯は選ばないですよね?たまにご高齢の方でゴールドクラウンを作ってほしいという方はいらっしゃいますが稀です。
日本の保険治療では確か審美に関する部分は硬質レジン前装冠、臼歯部は所謂銀歯でできると思うのですがそうすると1万円もしないですよね。一方自費治療の白い歯は結構値が張ります。なので『じゃあ銀歯でいいです』となることが多いような気がします。
でも、確か臼歯のCADCAM冠が一定の条件下保険適用になったようなので、これからは白い歯が増えていくのではと予想されます!!

4、「アンレーの窩洞をCRで修復」という記述がありましたが(別日に)、CRで日本よりも大きな範囲をやっているのでしょうか?
日本ではアンレーサイズになると「CR修復は壊れる」といって、金パラにする先生が多い印象ですが。

スウェーデンの歯科では、とりあえずなんでもかんでもCRで修復するイメージがあります。SNSでつぶやいたところ、日本の先生が保存修復のガイドラインを紹介してくださいました。
臼歯部の2級窩洞におけるCR修復とメタルインレー修復の臨床成績の違いについてのガイドラインによると、臨床成績の違いはないがCR修復は歯質を可及的に保存することができる上に審美性も高いので確実な接着操作とCRの充填操作が可能ならCRが推奨されるとのことでした。
しかし、この”確実な接着操作と充填操作ができるかどうか”というのは術者の考えにもかなり左右されると考えます。ガイドラインによると、隣接面に限局した小さな窩洞では操作が容易であるが、隅角を超えた大きな窩洞では難しくなるとの記載もあります。
スウェーデンでは隅角を超えるような大きな窩洞や3壁・なんならすべての壁が失われたような場合にもCRを行いますが(4壁歯質のないものにCRしたものをコンポジットクラウンと呼んでいます。)とにかく時間がかかります!時間をかけてマトリックスバンドを歯に1周巻き付けCRをたくさん詰めます。歯質が少ない場合は2種類のマトリックスバンドを使い分け修復することもあります。コンタクトもかなりいいですし、かなり持ちはいいと思います。国民歯科のホームページでインレーについての記載がありましたが”ポーセレンまたはセラミックインレーは口の奥にある大きな欠損のある歯に行われます。”と書かれているので、例えば8がある人の7の遠心などで口があまり長時間あけていられないような人に適応なのかもしれません。でも私は約1年バイトをしていて1度も見たことがありません。
プライベートの歯科のホームページなどを見るとインレーアンレーのほうが強くてきれいで適合もいいとかかれており、インレーアンレーを推す歯科医院もあるようです。インレー・アンレーは保険適応にはなりませんし、CRよりは高額です。
プライベートとしては時間短縮できてお金が高いインレーアンレーのほうがいいのかもしれませんね。

先ほども記載しましたが大きな窩洞のCRは時間がかかるのでインレーのほうが時間が短縮できると思います。形成して印象を取ったほうが早いです!先生が形成して次のユニットへ、そこで形成してる間にスタッフが印象・・・なんていう光景はよく見ますよね。
なので日本の歯科の診療形態ではなかなか時間をかけて大きい窩洞をCRするのは難しいのではないでしょうか。それから、コンタクトが悪くなることを気にされている先生やすぐに壊れてしまうことを心配する先生は多かったような印象です。

こちらでは歯質がかなり少なく根の状態もイマイチで予後が不確かな歯の場合に、本当はクラウンが適応ケースだけれど
予後が悪いのでクラウンの数万円をその歯にかけるのはもったいないというので患者さんに説明してコンポジットクラウンにしてダメになるまで使ってもらうということもよくあります。
安いクラウンがないので、日本のようにとりあえず保険のクラウンをセットして使えるまで使いましょうというのがしにくい環境だと思います。

5、スウェーデンの場合、診療現場で患者に対して歯磨き指導、フロス指導など、予防教育を行うことはあるのでしょうか?
行う場合、費用なども教えてください。

はい、もちろんあります。
検診の際には指導や予防教育をしなければいけません。それをしてやっと点数が取れます。初回の検診は割引などを考えないと830kr(約10700円)なのですが、
・カリエスの診断・簡単な歯肉炎、歯周病の診断・口腔粘膜、顎機能、さらに精査が必要な状態の発見
・診断の必要に応じたレントゲン撮影。4枚の口腔内レントゲンまで。読影も含む
・リスク判定
・口腔清掃指導や食事指導などのアドバイス
・5分以内の予防的処置(口腔清掃指導・歯石除去やフッ化物塗布など)
が含まれます。

さらに細かい予防指導をする場合は、”口腔内の問題に対する情報提供や指導“という項目で点数を取ることができ、だいたい6000円くらいです。ストックホルムの国民歯科だとこれが細かい予防指導とさらに細かい予防指導に分けられており、前者は3000円ちょっと、後者は6000円ほどです。

現場では、例えば初期虫歯が歯と歯の間にたくさんある人に対して進行しない様にフロスを指導したり、フッ化物洗口を勧めたり、食事指導を行います。

私たちの知識を、患者さん1人1人の口腔内状況に合わせて提供するので予防指導にもそれ相応のお金が発生するのは正しいことだという考えのようです。

日本のように予防指導のお金があまり取れず、処置のみに点数があるという状態になると歯科医師は処置をしなければお金を稼ぐことができなくなり、処置すべき部分にばかり目を向けるようになる恐れがあるのではないかと思います。
もっと予防処置に重きをおいてほしいと思うのですが・・・

さて、以上で質問に対する回答は終わりですがいかがでしょうか?
まだ不明瞭な部分・わかりにくいところがあればできる限りお答えしますので教えてください。
私はまだ働き始めたばかりなので足りない部分もあるかと思います。もし何か補足があればぜひ教えていただけると幸いです。

VipeholmsexperimentenとLördagsgodis その1

子供を検診するときに必ず質問することがあります。
『甘いものはどれくらいの頻度で食べている?』ということです。
子供はだいたい週に1回、土曜日とか金曜日の夜などと答えますが、このようにお菓子を週に1回だけ食べるという概念を土曜日のお菓子、ラーダーグスグーディス(Lördagsgodis)と言います。
私の主人も小さいころ、自分専用の容器に入ったお菓子(グーディス)を毎週土曜日に親からもらっていたそうです。かなり楽しみにしていたとか。
今回は、この概念が広まるきっかけになった
そしてスウェーデンの歯科を語る上で外せない研究について書きたいと思います。

その研究は1945年~1955年に行われた有名なVipeholmの研究(Vipeholmsexperimenten)です。
この研究のおかげでスウェーデンはその名を歯科界に轟かせることに成功し、歯科は職人の手工業という立場からアカデミックな分野として考えられるようになりました。
そして今では当たり前に知られている『砂糖を取ると虫歯になる』ということがこの研究で証明されたのです。
しかしこの研究はかなり物議をかもし、現在ではいわゆるスウェーデンの黒歴史的な研究でもあります。

今回、この研究について、スウェーデンで放送されたラジオ番組や論文・精神医学博物館の資料をもとにまとめ、さらに現在のナショナルガイドラインではどのようにとらえられているかを書いてみたいと思います。

この研究を行うに至ったスウェーデンの状況を振り返ってみると、

1942年の時点で徴兵前検診時、つまり18歳くらいにおいて(当時は徴兵が義務でした)99.9%に虫歯がありました。
小さい初期カリエスではなく大きい穴、そして大多数が神経まで達するような虫歯を有していたそうです。
3歳児の83%も虫歯があり、なんと義歯を入れていたりもしたとのこと。
それぐらい、当時のスウェーデンは虫歯が多かったようです。当時は歯科医師が大きな街にしかおらず、さらに高額でなかなか一般人が気軽に通えるようなものではなかったことや、虫歯の原因などがきちんとわかっていなかったこと、砂糖が安くなりお菓子が簡単に手に入るような時代だったことなどが理由のようです。
当然それほどまで大きなカリエスができてしまうと仕事も病欠になり数週間お休みするなんてこともあり、そうなると労働力が少なくなり経済的にも影響が出てしまいます。
なので虫歯は当時スウェーデンにとって本当に大変な社会問題になっていたとのこと。
そこで政府は、市民の口腔内の健康を促進しこの問題を解決するための改革を提案しました。
それは
・歯科医療を17歳まで無料にする
・国が成人の歯科治療を一部負担する
・歯科医院を増やし、大きな街以外にも歯科医院を作る。
ということです。
しかし、以上のことを達成するためには国の予算を大幅に増やす必要がありつまりは税金を増やす必要が出てきてしまいます。
今のスウェーデンに住むものとしては今とのあまりの違いに驚くのですが、当時は『お金を持っている人が貧乏な人の健康と幸福のためにお金を払う』ということに対して大きな疑問と躊躇があり、物議をかもしたようです。(今なんてとんでもない税金を働いている人たちは払っているのに!)
そして、この改革をしたとしても虫歯が増え続ければさらにお金ががかかってしまうということで虫歯を治療するだけでなく予防する必要もあるという結論が出されました。
そのため政府は改革を導入するにあたって国民の信頼を得るためにきちんとした研究をして科学的根拠を示す必要があると考えたようです。

以上のような背景を踏まえて、政府は研究プロジェクトをスタートさせMedicinalstyrelsen(現在のSocialstyrelsen、厚労省)に人間を用いた研究を通して、『虫歯の原因はなにか?』と『どうすれば虫歯を予防できるか?』という2つの疑問を解決するように課題を与えました。
国際的に刑務所や孤児院での研究はありましたが、囚人や子供たちはその場にずっととどまっているわけではないので長期の研究は困難な上に被験者が少数でした。
スウェーデンの研究者たちはどうしたら世界的にも信頼性のある研究ができるかを考え、統計的に信頼性を持たせるためには被験者が約1000人ほど必要であり、さらに被験者が細かくコントロールできるような施設での研究が必要ということになりました。

そこで白羽の矢が立ったのがLundの郊外に位置するVipeholmの施設でした。

Vipeholmの建物(写真はÖppet bildarkiv, Sydsvenska Medicinhistoriska Sällskapet (SMHS)より)

この施設は、重度の精神疾患をもつ方たちのための国の大きな施設4つのうちの1つで、重度の精神および身体障害を抱えた人たちが治療を受けていました。
1/4の患者さんがコミュニケーションをとることができず、半分は寝たきりだったそうです。ほとんどの患者さんが食事介助を必要としさらには一生を施設で過ごしたそうです。
1920年代当時、様々な人種が国に入ってきたために精神障害者が増えたと心配されていました・・・そして、そのような病を抱えた方は感情がなく、痛みなども私たちと同じように感じることができないと考えられていました。さらに、社会に貢献せず重荷な存在として扱われていたそうです。当時は残念ですが、すべての人間の価値は同じとは考えられていなかったんです・・・とても悲しいことです。
そのため、この研究が許可された際にはこの研究は患者さんたちが社会の発展に貢献できるチャンスだとポジティブにとらえられたそうです。

1943年、Vipeholmに歯科研究所が作られ、研究の準備が進められました。患者さんの協力を得るのは思っていたよりも難しく、暴力を行使してはいけないという決まりがあったため被験者は1000人から660人ほどになりました(それでも統計的には十分な被験者です)。

写真はVipeholmで働く歯科医師(写真はÖppet bildarkiv, Sydsvenska Medicinhistoriska Sällskapet (SMHS)より)

1946年、虫歯予防を目的とした研究が開始されました。最初は様々なビタミンやミネラルを患者さんに摂取してもらい何が虫歯予防になるかを調べました。
患者さんはグループに分けられ食事をコントロールされましたが結果は感染症の低下と体重の増加(研究前まではきちんと栄養のある食事ではなかったため)は認められましたが、口腔状況の改善・虫歯予防にはつながりませんでした。
国を挙げての大きな研究プロジェクトなのに思うような結果が得られず、研究チームは焦ります。そしてポジティブな結果を求めて研究者たちは政府や国会に秘密で研究を続けました。
国で決めたプロジェクトは、まず予防の観点から調べるというものだったのにもかかわらず、研究者たちが勝手に虫歯を引き起こすための研究を行うことを決め政府に言わずに実行したのです。
当時、砂糖が虫歯の原因だろうということは言われていたのですが、信頼性のある研究はなくエビデンスがない状態でした。
そしてついに1947年、予防の研究から打って変わって虫歯を引き起こすための実験が開始されました。
ここで興味深いのは、研究が行われる前の会議において研究者たちが『患者さんたちを動物のように扱わないのは当たり前だ』と話していたのに実際は被験者がまるで動物のように扱われてしまったことです。
研究者たちは、倫理的にまずいと知りつつも止められなかったのでしょうか・・・

政府の協力を得ずに研究を続けるためにはスポンサーが必要です。
そこで、砂糖と歯の関係を気にしていた業界・・・砂糖工業が興味を示しました。この研究の結果によっては砂糖の疑いを晴らせるかもしくは製品を調整できると考えたからです。
砂糖の会社がスポンサーになり、研究のために特別なお菓子を作ってもらいました。”Vipeholmskolorヴィぺホルムのコーラ(スウェーデン語でコーラはキャラメルのようなべたべたしたお菓子です)”
とよばれる、大きくて必ずかまなければいけないものすごく粘着性の高い長時間歯にとどまるように作られたキャラメルです。
研究で用意されたチョコレートは500㎏以上、キャラメルは約2トンだったそうです。

患者さんは複数のグループに分けられ、同じ食事+チョコレート・キャラメル・砂糖を入れた飲み物などを毎日決まった数量与えられました。その数は20個以上。そして、歯磨きは1度もしませんでした。施設のスタッフは細かく患者さんが何を食べたかチェックし書き記しました。

そして1年半後、ついに研究者たちの望む結果が出ました。
キャラメルやトッフィーを与えられた220人の患者さんは平均10個、一番多い人で17個もの新しい虫歯ができたのです。研究が終わるまで歯の治療はされませんでした・・・痛くて噛めなくて、苦痛を訴える患者さんはそのままにされ研究は続きました。
統計的には1年半で十分だったのに、さらに半年研究をつづけました。
しかしそれでも研究者たちは軌道に乗った研究をやめるのがもったいないと思いさらに研究を続けようと思いました。
研究を続けるためにお金が必要なので、研究者たちは
Sötsaksjätten Chokofaという会社に連絡をとり、会社は研究の結果を決める際の話し合いに参加する権利を買収しました。
研究者たちは、通常の量の砂糖やお菓子の摂取量で何が起きるかを調べたかったのですがそれにはさらに2年の研究が必要だった上に、通常の量というのを定義するのが不可能なため中止になりました。
そしてその後から結果が書かれました。

1953年、最初のレポートが論文として出されました。
そしてもちろんですが、問題になりました。当時はなんと倫理的な問題には目を向けられず、砂糖工業がスポンサーとして研究に関わっていることが問題になったようです。
次の年、砂糖業界の反対を押し切り砂糖の歯に対する悪い影響を書いた本が出版されてしまいました。研究後しばらくは砂糖業界と研究の関係が問題になっていたのですが、問題の論点はひょんなことから変化します。
Vipeholmで2か月働いていた方が、Vipeholmの実態を記事にしそこでは革のベルトで患者さんを追い回したたくというような記載がありました。
そして、それがもとによって調査されVipeholmで働く一部の人がスウェーデンで初めて人を不正に扱ったとして罰せられました。
Vipeholmでは患者さんたちは古い間違ったやり方例えばベッドに縛り付けられたりという風に扱われていました。
今度は患者さんに対するひどい扱いが物議をかもしたのです。

それでもまだ、研究自体のやり方自体が問題にはなることはなかったようです。
研究の成果によって『炭水化物をなるべく控えるように指導し、砂糖は税金を2倍にする』という提案がなされましたが当時は砂糖工業はたくさんの雇用を抱えておりもし砂糖の税金を上げてしまうと多くの人が職を失うと予想されたために実行は難しく、ちょうどその時ノルウェーの研究でフッ素の予防効果が証明されたために税金を上げるよりも予防を強化しよう、という流れになったそうです。

 

長くなってしまったので、その2へ続きます。

Vipeholmsexperimentenとlördagsgodis その2

前回の記事の続きです。
読んでいない方はコチラから。

さて、
ついに1955年、Vipeholmの歯科研究所は研究の成功をもって閉じられ、スウェーデンは世界の歯科界にその名を轟かせました。
しかし結果はいいものだけではありません。患者さんは完全に歯がボロボロになり、噛めなくなってしまい腸の問題を起こしたりなどの問題に一生苦しめられました。
患者さんは研究後2000本抜歯、3000本が詰め物をされたとのことです。
当時研究にかかわった研究者は生涯を終える前に研究を振り返ってコメントを残しています。『私たちにとってこの研究(患者さんにカリエスを作ること)は倫理的な問題はなかった。私たちにとっての倫理問題は被験者のカリエスを残したまま症状を消せなかったことだ。(治療しようとするとカリエスを取らなければいけないので)』・・・なんと。彼は研究自体に倫理的問題があったとは考えていなかったようです。そういう時代だったんですね。

倫理的な問題に注目され始めたのはずっと後、現在のように人々の価値はみな同じでみな正しく扱われなければいけないという概念が出てきてからのことです。

患者さんたちがこの研究をどうとらえていたのかは今となっては知る由もありません。でも、研究中は通常よりもバランスの取れた豊かな食事をとることができたし、社会からの注目をあび、さらには単調な毎日から少し開放された時だったのかもしれません。キャラメルやチョコレートはおいしく、喜んで食べていた人もいたようなので少しは患者さんにとってポジティブな思いもあればいいけれど・・・とラジオでは言っていました。
嫌いな人もいたようでキャラメルを食べずに丸めてボールのような大きさになるまで隠していたり、患者さん同士で交換したり・・・といったこともあったそうです。

Vipeholmsexperimentenのおかげでスウェーデンは歯科界で有名になりさらにスウェーデンの歯科医療に革命を起こしました。歯科医師の地位は上がり歯科はアカデミック職業になりました。
食事とカリエスの関係が導かれ、国民はどのように歯を磨くか・何をどの頻度で食べるかを話し始めました。
そして、この研究がLödagsgodis(お菓子は1週間に1回だけ)の概念のもとになり、それは今日まで続いています。

しかし同時に、倫理の問題も今日ではより深刻にとらえられています。研究が行われた当時、倫理委員会は存在していませんでしたが、存在したとしても研究後に倫理問題が騒がれなかったことから倫理委員会が今日と同じような働きをするかは不明です。
さらに、ニュルンベルク綱領がすでに提示されていたのにもかかわらず患者さんの同意を得ることもなく患者さんの身体的苦痛を引き起こすような実験をしました。
簡単に行ってしまえば、当時はそういう時代だったのでしょう。
倫理感が全く異なっていたんだと思います。

この研究は歯科界で本当に大きな意味を持つ研究ですし、歯科の発展のためにはなくてはならなかったのかもしれませんが
当時の施設の様子や研究方法を考えると本当に何とも言えない気持ちになります。
ヨーテボリ大学の先生はラジオで『この研究はよく計画され、コントロールされており大きな意味を持つ。すでに行われてしまっているので後から倫理的な問題を判断することはできないし、この研究がスウェーデンで行われたことを誇りに思う』とコメントしています。

私はこの研究に対してはいまだに自分が持つべき感想はわかりません。
最悪だ。と思う気持ちと必要だったと思う気持ちが入り混じっています。

さて、研究によって『虫歯は頻繁に甘くてべたべたした食べ物に歯がさらされた結果起こる(この時点では砂糖の量より摂取の頻度によう要因が大きい)』という結論が出たわけですが、
先ほど書いたように、フッ化物の予防効果が示され1960年代の終わりにはフッ化物入り歯磨剤が売り出されました。
さらに、60年・70年代にシュガーレス製品の研究が進みLördagsgodisの概念が広まったことよりスウェーデンの国民の口腔状況は改善されていったようです。

1970年代にはかなり改善され、70歳の2人に1人が無歯顎、現在はほとんど無歯顎の方はいません。70歳の平均残存歯数は20本です。(1970年代は5~6本)

私の義理の両親は1950年代半ばに産まれたのですが、当時の歯医者の思い出や虫歯についてよく教えてくれます。4、5歳くらいの時、2人とも親に『寝る前にベッドにチョコもっていきなさい』なんて言われてたし、歯はきちんと磨かないしで乳歯は虫歯だらけだったそうです。歯医者さんも恐ろしく、いつも杖をもっていておとなしく治療を受けないと折檻されたと語っていました(今なんてあんなに子供に優しいのに!!)。
Lördagsgodisという概念はまだ広まりきっておらず、さらにお小遣いをもらっていて好きに甘いものが買えたので、甘いものを食べまくっていたといっていました。

でも今、義母と義父の歯はかなりたくさん残っているし、口腔衛生状態もかなりいいです(歯医者についていき、口腔内を診ました)。たまに問題が起きるのは前に治療したところがとれたり・・・という感じです。本人たちは『歯が悪い』と常に言ってくるけれど、口腔内を見る限りではとてもきれいでした。

なぜそんなに口腔状態が改善したのでしょう。
2人によると学校に上がるとFluortantがきてフッ素でうがいをさせられたし、歯磨きさせられたし、甘いものをそんなに食べない様にうるさく言われたとのこと。
学校歯科の充実とフッ化物の使用がカリエスを減らした、ということでしょう。

ちなみにGodisというのはキャンディーやグミのような小さいお菓子で、1985年からスーパーなどで自分で選んで買う方式になり、グーディスを買うのがさらに簡単になったためによりLördagsgodisの考えが広まりました。
(私たちも、今でも土曜日にたまに買ってしまいます!)

グーディスを選んでいる親子。

さてさて、最後にスウェーデンのナショナルガイドラインでは
カリエスに対する食事指導はどのように書かれているのでしょうか。


これはSos(厚生労働省)のガイドラインを訳したものですが、
・進行のリスクがあり、砂糖の摂取が多い方の初期歯冠・歯根カリエス
・歯冠・歯根カリエスになるリスクがあり、砂糖の摂取が多いかたへの対応として
『砂糖の摂取を、頻度・量とともに減らす』というものが高いレベルで推奨されています。
Sosのページでは、状態をクリックするとどうして推奨のレベルが3になったのか、どの研究を用いたのかなどが細かく記載されています。
(後ほどきちんとガイドラインについても書けたら・・・と思います!)
ここにもVipeholmsexperimentenが引用されてはいましたが、”この状態に対する対応に関しての推奨レベルは、十分なエビデンスがないと思われるのでSosのエキスパートグループが現在の最も信頼性のある研究・知識を話し合い判断された”との記載があります。
実は授業で、『私たちの国では食べ物の性状も大きな意味をなしていて、べたべたして歯にくっつくようなものはより歯に悪いとならったけれどなぜその記載はないのか』という疑問が生まれました。
カリオロジーの先生は、『べたべたしたものはよりカリエスを引き起こしやすい、というのはVipeholmから導き出されたことで、現在同じような実験をするのは倫理的にも不可能だし再現性がないために性状に関してはエビデンスが十分とは言えずなんとも言えないと判断されている。さらに、例えばべたべたしていないと虫歯になりにくい・・ということを言ってしまうと、A社のお菓子は虫歯になりにくい・B社のはなりやすいという風に判断されてしまい、お菓子業界にも影響が出たり、お菓子会社が性状のことを推して売り出したす可能性が示唆されるのでガイドラインには記載されていない』とのことでした。
また、最近はフィンランドの研究で、頻度よりも量に注目する研究がでたりしたそうなので今度調べてみたいと思います。
今年ガイドラインが改訂されるので、いろいろな項目がどう変化するのかを楽しみにしています!

今回、有名なVipeholmの研究についてのラジオや資料を読んで知ることができて本当に良かったと思っています。
世界ではかつて、非人道的な人体実験が行われてきて現在の医療はその恩恵を受けているとも言えます。かつての残酷な実験なしには医療がここまで発展しなかっただろうし、本当それらの実験は医療の世界・現代の社会に大きな意味のあることだったのかもしれません。
Vipeholmsexperimentenも歯科界・そして虫歯予防の観点からは本当に大きな意味を持つ実験だったとは思います。その他の残酷な人体実験と比べ『虫歯だし、死に直接かかわることじゃないから・・・』と軽くとらえられてしまうかもしれませんが、それでもすごい痛みを感じた方や虫歯の後遺症に苦しんだ人たちはたくさんいるだろうし
患者さんの状態を利用して病気を作り出した実験・・・受け入れがたいです。でも私たち歯科医師はこの研究で得た結果をもとに現在では当たり前の『砂糖が虫歯を引き起こす』ということをエビデンスのある知識として使えるようになりました。

なので、この研究に参加された患者さんたちに感謝し、苦しんだ人たちもいること、背景をきちんと調べ理解し、忘れないようにしたいと思いました。

ついつい熱くなってしまいましたが、今回色々調べることができて本当に良かったと感じました。

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今回のブログを書くにあたって、
以下のウェブサイト・ラジオを参考にしました。
SverigesradioのP3 Dokumentär
http://sverigesradio.se/sida/avsnitt/65245?programid=2519
Psykiatriska museet
http://www.psykmuseet.se/2013/08/vipeholmsexprimenten/
Göteborg Universitets webbsida, Karies uppgång och fall
https://gu-spegeln.gu.se/tidigare_nummer/guspegeln-nr-1-10/karies-uppgang-och-fall

また、Vipeholmの写真はSydsvenska Medicinhistoriska Sällskapetのウェブサイトからたくさん見ることができます。

スウェーデン語が分かる方は、ラジオ本当に興味深くて面白いのでお勧めです。
(ほとんど内容はブログにまとめてしまったのですが・・・)