小児歯科が始まって・・・

小児歯科が始まり、子供の検診や治療をしています。

前にも記載しましたが、スウェーデンは3歳から2年おきに義務検診があり子供は必ず歯科に通わなければなりません。
子供は歯科治療が無料なので、カロリンスカ大学やFTVは代わりに国からお金をもらうので2年おきに”検診をした”ということを報告しなければなりません。
カロリンスカの小児歯科では1歳児から保護者への指導などを部屋に集めて行っています。
私たちが担当しているのはその義務検診やリスクが高い子供への検診、歯の萌出や歯並びのコントロール、そして検診時に見つけたカリエスの治療です。

日本にいる時から子供はすごく好きだったのですが、なかなか治療がうまく行かないこともあり少し苦手意識がありました。
泣かれてしまったり、叫ばれてしまったり・・・でも、こちらで検査や治療をしているとなかなか協力的な子が多く小児が好きになってきました。

最初はスウェーデン語で子供と話すなんで絶対できないと思っていましたが、子供と話すほうが正直楽です。何故なら、子供はあまり難しい単語を使いませんし、私が言ったことがわからないとストレートにわからないと言ってくれるからです。
そっちのほうが私にはありがたいと感じています。

スウェーデンの小児歯科は日本の小児歯科と比べて結構違いがあると感じています。
面白いかったのが、ある日先生から『日本では子供を押さえつけて治療するんでしょ!?ネットにぐるぐる巻きにされてヘルメットみたいなのをかぶらさせられて治療しているというのを、日本から来た先生に当たり前のように見せられてとっても驚いたんだけど本当なの!?』と聞かれました。

ヘルメットはわかりませんが、それはレストレーナーのことだったようです。
治療に協力的でない子供や障害を持つ子供などに安全に治療を受けてもらえるように日本の小児歯科や障がい者歯科で使われているものですが、私も手が出てしまったり動いてしまうような子供のけがを防ぐためには有用なのではないかと思っていました。レストレーナーを使わないにしても、歯科医院のスタッフが数人で抑えて治療するような場面は見たことがあります。

こちらでは一切使われていないとのことで、小児科の先生に『暴れてしまう子供や障害を持つ子供、治療に協力できない子供たちはどうやって対応するのですか?』と聞いたところ以下の回答をもらいました。
1、だいたいの子供はTell Show Doでゆっくり慣らしていけばうまく治療できる
2、不随運動などがあったり協力できない子には押さえつけでなくビーンバッグに座らせると安定して安心するので治療できるようになることが多い
3、保護者に抑えてもらうこともある。
4、それでもだめなら鎮静(ミダゾラムを経口か経腸)
5、それでもだめなら全麻(毎週月曜日、1日2,3症例。なんと1年待ち・・・)
という流れだそうです。

ここでは歯科治療を子供に受けさせるのは保護者の責任であり、歯科医師の責任は適切な検診・治療の提供。そのため、必要に応じて抑えるのは保護者の仕事であり、医療従事者がレストレーナーを使って抑えるものではないということを強調していました。文化の違いなのよ、と。

Tell Show Doの大切さは、今身をもって痛感しています。
本当にできるようになる子が多くて!!
この前来た4歳の子供も、最初は怖くてお母さんの膝から降りようとしなかったし口もあけられませんでしたが、きちんとミラー・探針・ユニット・バキューム・3ウェイシリンジさらにはゴム手袋を見せて触らせて、水や風を出してもらい、ランプを自分でつけてもらったりして徐々に慣らしていきました。口腔内を見る際も、何かを行う前に必ず説明して1段階ずつ丁寧にすすめていきました。
探針を使う際にはまず爪にあてて、その後に『歯にあいさつするからお口ワニさんみたいに開いてね』と言って挨拶しながら歯数をチェックしプラークを見ていきました。フッ化物塗布までうまくできたのですが、残念ながらカリエスがあったので治療の必要がありました。
もう1度時間を取り、今度は削るためのTell Show Doです。
2回目は自分からユニットに座り、大きく口をあけてくれました。お母さんから『この前とっても上手にできたからってすっごく誇らしげに帰ってきて、いまだに歯医者さんからもらったシールを飾ってるんですよ!歯医者さんが好きになったみたい!』と言われたのでとても嬉しくなりました。
ワニのぬいぐるみ”クロコちゃん”を使って、パワードライブを用い患者さんにボタンを押してもらいました。そしてグラスアイオノマーを詰めるところまで見せました。
こうやってすべて見せることで子供も心の準備ができるし、安心して治療が受けられるようになるのかもしれないと思いました。

麻酔の感覚に驚いて怖くなってしまう子供もいるのでそこは難しいのですが、うまく行くケースは本当に多いような気がしています。

それから、かなり注意して言われるのは『子供にまず話しかけること』です。私も子供を待合室に迎えに行くときには必ず保護者より先に子供に握手し、自己紹介します。そして、問診するときも絶対に初めに子供に聞くようにしています。
『元気かな?』と聞いた後にあくまで補足として(問診に書くのはこっちがメインですが)保護者に『大きな病気やアレルギーはないですか』と確認しています。
保護者はあくまでも補足してくれる存在で、治療や検診の中心は子供だからです。
ちょっとやりすぎかな・・・なんて思うこともありますが、保護者の方も慣れているのでうまくやってくれます。
(ただし文化が違う家族などでは『子供はわからないんだから保護者に聞いてくれ、時間がかかる』みたいに怒った方もいますが、それは稀です。)

小さいころからこのような経験をしている子供は歯科に対して恐怖心を抱きにくく、ポジティブなイメージをもってくれるとのことです。
そうすれば大人になっても検診に来てくれるし、もし治療が必要になってもそこまで『歯医者さん行きたくない・・・』とはならないのではないでしょうか。

カリエス治療のほとんどにおいて麻酔が推奨されています。
私たちが削ると判断した歯は、治療に痛みが伴うことが多いからだそうです・・・
10歳以下では麻酔の有無の判断が自分でできないので必ず麻酔を、それ以上なら様子を見ながら・・・とのことです。
こっちは子供にも伝達麻酔を普通に使用します。治療中に痛みを感じさせることが何よりも悪いとされているようです。
ただし、乳歯のオープンになっているカリエスであればカリソルブやパワードライブ・ハンドエキスカを使用して無麻酔での治療も可能です。
パワードライブは自分でボタンを押してもらうので、ゲーム感覚で楽しいみたいです。

検診で調べることはココに記載してあります!
補足としては、3歳の検診では夜にミルクなどを飲んでいるかどうかの確認です。それはリスクなので、きちんと説明して辞めるように指導します。
ちなみに去年の夏ごろに小児について書いていましたが、少しは私にも心境の変化があったのでしょうか・・・
(日本では)小児歯科の実習中に、やるときは泣いてても覚悟を決めて治療する!こっちが弱い態度を取っていたら子供も覚悟ができなくて泣いてしまう、と言われたことがあったので、タイミングを見てぱっと治療するようにしていました。
なのでスウェーデンの、嫌がったらすぐに中断し子供に語り掛け説得するスタイルはなかなか慣れません。
『あーあー、余計泣かせちゃってるよ』と思うこともしばしば。。。
こんなことを書いていましたが、いまではすっかりスウェーデンの考え方に慣れてきたんでしょうね・・・嫌がったら中断して子供に語り掛けるの、すっかり慣れてしまいました。
なんだか自分の心境の変化を見られるのもこのブログをやっていてよかったと思う点です。
日本で育った私は、性別や年齢でできることは変わってくるんだからもっと臨機応変に対応すればいいのになぁなんて思うこともありますけどね。ここだけの話・・・“と最後にコメントしていますが、おそらくスウェーデンはスウェーデンで臨機応変に対応した結果、今のようになっているのかななんて思っています。どっちがいいか悪いかは全く言えません。でも、これがそれぞれの国の文化というものなんだと痛感しています。

でも、ちょっと悲しいと思うのは、子供は治療がタダということは子供1人に予算があってそれを超える治療は医院の持ち出しになってしまうようなので(自費でやる方法もあるようですが、詳しくは知りません。とにかく手続きが面倒くさいとのこと。)必要最低限の治療しかできないケースがあるということです。
例えばカリエスがたくさんあって、乳歯が抜歯になってしまうような子供には予算をカリエスの処置と抜歯で使い切ってしまうために保隙ができずそのまま・・・永久歯が変な場所に生えてきて矯正が必要になる、なんてことが多々あります。
確かそれも地域によってシステムが違い、オレブロという場所では結構保隙や咬合誘導に力を入れているなんて話も聞きますがストックホルムではほぼ保隙は行われていないと思います。
乳歯のエンドは一切行われず、大きな虫歯はほぼ即抜歯になります。エンドしてとりあえずスペース確保に~なんてことはなかなかできないようです。
これも予算の問題が大きく絡んでいるようです。

タダで受けられる、ということはその分我慢しなければいけないこともでてきてしまうということみたいです。小児専門の先生は嘆いていました。

それから、最近の歯科新聞で研究者のCさんが『最近の研究で、2014年にはハイリスクの子供の予防処置に平均29分・リスクが低い子供の予防処置に平均13分の時間がとられている。これは時間的に問題がないと考えられるが、リスクの低い子供には歯科医師が介入する必要があるのかと疑問を投げかけている。リスクが低い子供は衛生士・助手に任せて、歯科医師が介入しなくてもいいのでは。時間をもっと効率的に使うほうがいい。』とコメントしており、さらに、リスクの低い子供は2年ごとの検診は必要なくもっと検診の間隔を長くしてもいいのでは、との見解を述べていました。健康な子はどうせ虫歯にならないから見なくていいわ!ってことなんでしょうか・・・。
スウェーデンでは衛生士さんはカリエス・ペリオの診断が独立して行えるためにこのような提案ができるのだと思います。
これからスウェーデンはよりシステマティックになり、無駄が省かれ、分業化されていくのかななんて思いました。このシステムはほとんどの人口は救えるけれど、1部の急にカリエスになってしまう例は目をつぶる・・・なんてことになるんですよね。スウェーデンらしい考えです。
日本は歯科医師の責任がスウェーデンよりも重く、治療や検診の最後には必ず歯科医師が登場しチェックしているイメージですが、こちらは歯科衛生士さんでも独立して診断できるので歯科医師が介入しなくても大丈夫なようです。
この考え方にもものすごく慣れませんが、きっとまたそれが当たり前になっていくのでしょうか・・・

まだまだ不安なことだらけですが、少しずつ少しずつシステムに慣れていきたいと思います。
常に葛藤し揺れ動き、変化していく移民歯科医師の気持ちは、これからどうなっていくのでしょう・・・。

今、猛烈にアイデンティが迷子になっています!

さて、最後に小児で使われるビーンバッグとワニのクロコちゃんの写真を載せて終わりにしたいと思います。

ビーンバッグ。これにくるまって座ります。


ワニのクロコちゃん達。