今流行りのロイテリ菌。

日本のSNS、ネットやテレビで話題になっているロイテリ菌。
スウェーデンで働いているので、各方面から『ロイテリ菌ってどうなの?』と質問を受けることがあります。

ずばり、私は日本の先生に聞くまでロイテリ菌を知りませんでした。
カリエスの授業では、プロバイオティクスがちょろっと出てきましたが、スウェーデンの歯科の現場でスタンダードに勧められているものではないと思います。
患者さんにも聞かれたことがなければ、職場の話題にもぼることもありません。

そこで、スウェーデンでは実際にロイテリ菌・プロバイオティクスが歯科でどのような立場なのかを調べてみました。

今回参考にしたページは、スウェーデンの専門医や教授が歯科について書いているサイト、Internetodontologi・スウェーデンの歯科新聞、Tandläkaretidning・そしてSosのナショナルガイドラインです。

この中でロイテリ菌単独に触れているのは2016年6月14日に書かれた歯科新聞の記事だけで、後はロイテリ菌ではなくプロバイオティクスとしてまとめて書かれていました。

まず、すべての記事・ガイドラインにおいてプロバイオティクスとカリエスについて述べており、歯周病に関しては詳しく書かれていませんでしたので、今回はプロバイオティクスとカリエスについて書いていきます。

プロバイオティクスの効果のメカニズムは正確にはわかっていませんが、口腔内直接への作用と腸内に作用し間接的に効果を示すということが考えられています。口腔内のバイオフィルムに作用し、さらに口腔内の疾患を引き起こす細菌の邪魔をします。
間接的な効果は腸を介して免疫力を高めるそうです。
プロバイオティクスは医薬品ではなく、サプリメントとして扱われており、そのため、商品の生産者はプロバイオティクスの効果を消費者に宣伝してはいけない決まりになっています。

2018年9月に更新されていたInternetodontologiでは様々な研究を説明していますが、結論としては
今の時点で、プロバイオティクスを定期的に乳歯列の子供に与えるのはカリエス予防効果があるというエビデンスがいくつかはあるようですが、若年者・成人・そして高齢者への効果に対しては十分なエビデンスはないようです。
なので、より長期的で質の高い研究をさらにしていく必要があります。

研究のなかには、高齢者の根面カリエスに効果があることを示していたり、カンジダの発生を減少させることを示すものもありますし、カリエスリスクの高い子供への使用でフッ化物を日常的に使用しているのとほぼ同等の効果を示したものもあります。しかし、永久歯のカリエスへの効果に対してはまだ十分なエビデンスがありません。ないとは言い切れないし、効果はあるって研究はちらほらあるけど、まだ言い切れない!というのが現状のようです。

さらに、現在の段階では、長期的に見た社会的な利益と期待できる口腔および全身への利益を考慮した、医療経済的な評価がありません(直訳になってしまった上に私も医療経済について理解がないので良くわからずすみません。誰か詳しい方、教えてください!)ので、プロバイオティクスをアクティブに勧める段階ではないのかもしれません。

さて、歯科新聞では、Prodentisというまさにロイテリ菌の効果について言及していますが、これはデンマークとスウェーデンで行われた研究を紹介しています。
この研究では、ロイテリ菌の、18歳から32歳の健康な41人唾液中のIgAとサイトカインに対する効果を調べているのですが対照群とプラセボ群の有意差はなかったとのことです。但し、これは1つだけの研究についてですし、短い期間での実験ですのでこの効果がない、というのも鵜呑みにできません。

ということで、プロバイオティクスが確実な効果があるのか・ないのかを解明するにはさらなる研究が必要なようです。

スウェーデンで現在用いられているガイドラインには、
『チーズ・プロバイオティクス』の使用は、初期カリエスがあり進行のリスクがある人・カリエスリスクがある人に対しては、いまだにエビデンスが足りず結論を出すことができないという状態になっています。

ガイドラインはそろそろ改訂版が出ると思いますので、改訂版でどうなっているのか、また報告したいと思います。

どうしてスウェーデンではよく知られていないのに、日本では人気?になったんだろうと考えてみました。
日本もサプリは薬事品ではないので薬事効果を宣伝してはいけないということになっていると思うのですが、薬事法の隙間を狙った表現で宣伝してきますし、(スウェーデンでもそうなのかもしれませんが)テレビなどで健康に関する番組が多いですよね。取り上げられたものは話題になり広まりやすいと思うのですが、こちらでは健康番組のようなものはあまりないため、広まりにくいのかもしれません。
テレビの番組の質が全く違います。

今回調べていて思ったのは、フッ化物恐怖症の家族に産まれた子供たち(乳歯列)になら、勧めてもいいのかもしれないということです。
そういえばカロリンスカの過去問にもプロバイオティクスをフッ化物恐怖症の人の子供に勧めるという問題があったような気がします。
エビデンスはまだ確実ではないですが、副作用もないようですし、良い代替法かもしれません!
同僚たちにも見解を聞いてみたいと思います!

※今回の記事はあくまでも現在のスウェーデンのロイテリ菌・プロバイオティクスの位置づけについて述べているだけですので、現在使っていて、口の中がすっきりする・自分には虫歯効果があるという方たちのことを否定しているわけではありません。歯科医師としてスタンダードな虫歯予防としては積極的には勧められませんが、副作用もないようですしもしかしたら今後効果があるというエビデンスがでてくるかもしれませんね!

それから、日本のスウェーデンのイメージと実際のスウェーデンの差がすごくてたまに驚きます。スウェーデン式なんとか・・・のような本も良く見ますが、それは筆者の方のスウェーデンのイメージなのでは・・・『そうじゃないのになぁ。どこから来たんだろう、その情報』とと思うこともしばしば。
日本のみなさんの『素敵なスウェーデン』のイメージを壊したくないと同時に、スウェーデンだって問題だらけだわ!と突っ込みたくなることもあり葛藤しています。

Author: Y

2012年に都内歯科大を卒業。 その後しばらく働き、 2016年2月にストックホルムに移住。 スウェーデンの歯科に興味を持ったのは大学3年生のカリオロジーの授業のとき。 スウェーデンの歯科の実態が知りたい!

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