Fluortant (フッ素おばさん) についていった話

スウェーデンにはFluortanten (フッ素おばさん) とFluormannen (フッ素おじさん) という制度があります。
これは子供に歯の大切さを知ってもらい、予防してもらうためにFluortanten/Fluormannenと呼ばれる歯科助手及び歯科衛生士が学校を回って情報を提供するシステムです。

以下余談ですが、

おじさん?
と思うかもしれませんが、スウェーデンには男性の歯科衛生士さんが結構います。
歯科医師は女性がかなり増えているようで、国民歯科に至っては県が経営しているので安定しており育児休暇もきちんとしているため女性ばかりが働いています。
ちなみに私が働いている国民歯科は、男性歯科医師が1人、男性衛生士が1人、男性の主任が1人。それ以外の20人ほど(正社員)は全て女性です。

——以下ストックホルムの国民歯科のホームページより引用———
https://www.folktandvardenstockholm.se/skola/fluortanten/

Fluortanten
フッ素おばさん

国民歯科のフッ素おばさん、おじさんはLän (ここではストックホルム県) の口腔状態をより良くするために小学校の子供の予防に働きかけます。

フッ素おばさんは実は1960年代に登場したようです。
この頃の生徒の口腔状態は悪かったようで、それを改善するために始まりました。
その頃は、フッ素おばさんたちが生徒たちに0.2%フッ化ナトリウムの洗口液で毎週または隔週で口をゆすがせていました。

この試みは成功し、口腔状態が改善されたので学校がフッ化物洗口を止め、90年の初めにはフッ素おばさんも消えました。

私の主人、義弟、義妹はちょうどフッ素おばさんの制度が廃止されたころに学校に行っていたので校内でフッ素洗口はなかったようですが、義理の両親はフッ素おばさんにフッ素で口をゆすがさせられたと言っていました。

Fluortanten kommer tillbaka
フッ素おばさんが戻ってきた!

フッ素おばさんがいなくなってから、県の中で口腔状態が悪化する地域が出てきてしまったのでストックホルムの国民歯科は “Kariespreventionsprogram (虫歯予防プログラム)” を始めました。
フッ素おばさん・おじさんの仕事はそのプログラムの1つで2000年代から始まり、フッ素おばさんが再び戻ってきました。

フッ素おばさん・おじさんはストックホルムの全ての6歳児クラスと5年生(12歳)の児童に毎年”健康な歯”というテーマの授業を行います。
リスクの高い地域では、先生たちにフッ化物洗口を教えて先生たちに各自クラスでやってもらうという試みが始まっています。
毎年、5万人以上の子供たちに口腔の講義が行われ、8500人以上の子供たちがフッ素洗口を行っています。

*6歳児クラス=Förskoleklassといい、小学校の準備クラスです。スウェーデンでは小学校は7歳から始まります。
(保育園(幼稚園)はFörskolaといって1歳から5歳までの子供が通います。義務教育ではありません。)

つまり子供たちは学校で6歳と12歳の時の2回、フッ素おばさんに会うことになります。

Fluor, vila, vatten
フッ素、休憩、水!

フッ素おばさんのメッセージは簡単です。
まとめると

  • 歯は大切!一生に必要なものです。
  • きちんと歯を磨きましょう。朝晩2回、フッ素入りの歯磨き粉で。
  • 食事の間に歯を休ませてあげましょう。だらだら食べるのはダメ!
  • のどが乾いたら水を飲みましょう!
  • 新しく出てくる奥歯は特に気を付けて!より丁寧に磨きましょう。
  • お菓子?チップス?甘い飲み物? 1週間に1回なら大丈夫。食べるならなるべく1度に食べましょう。

Fluortantens dag
フッ素おばさんの日

毎年9月1日はフッ素おばさん・おじさんの日のようです。
何かイベントがあるようです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

と、ここまでは国民歯科からの情報ですが、実際にフッ素おばさんについていく機会をいただいたのでその様子を記そうと思います。

ついていったのは研修先の国民歯科が担当するエリアの小学校の1つ。
その日は6歳児たちへの講義でした。

フッ素おばさんは仕事のできる歯科助手のUさん。
彼女が私の働く国民歯科のフッ素おばさんを担当しています。

学校につくと6歳児クラスの子供たちが椅子に座ってきちんと私たちを待っていました。今回は3クラス回る予定になっていました。
フッ素おばさんは紙芝居を使って子供たちにお話したり、質問したりしていきます。
紙芝居は、
まず動物がたくさん載っているページから始まり、歯のある動物ない動物を言ってもらいます。そして歯の役割を考えてもらいます。
子供たちはやる気満々。手がどんどん挙がります。
歯は食べるため、かむため、喋るため、キスするためにさえ必要!絵とともにと伝えます。
人間の子供の歯、大人の歯は何本ですか?という質問に
6歳の子たちが「20本~!32本~!」と答えておりとても感動しました。
私なんて大学に入るまで知らなかったのに・・・

続いてフッ素おばさんが、なぜ虫歯になるのかを説明し
次に歯を守るためにはなにができるか聞いていきます。
みんなこれにもきちんと答えていて、スウェーデンの子供たちの歯科の知識の高さに驚きました。
フッ素おばさん(以下フ)「のどが乾いたら?」
子供たち「水!」
フ「歯は何回磨くのかな?」
子供「朝晩2回!」
フ「何で磨くの?」
子供「フッ素の歯磨き粉!」
フ「どれくらい磨くの?」
子供「2分!」
フ「甘いものは?」
子供「毎週土曜日!」
こういったことが自然にしみついているようでした。
フッ素おばさんがさらに補足で、2cmのフッ素の歯磨き粉で、2分、2回磨くんだよ!2,2,2だよ!とわかりやすく情報を伝えていたのも参考になりました。

その後、間食を10回以上もしている男の子の絵を見せ、
みんなで間食の数を数え、絵で歯がヘトヘトなことに気づいてもらいます。
そして、歯も休ませてあげることが大切だと学んでもらいます。

フ「この絵の歯、どう思う?」
子供「疲れててヘトヘトー」
フ「じゃあどうしてあげればいいと思う?」
子供「休ませてあげる!」
フ「歯が休むのってどんな時?」
子供「・・・」
フ「じゃあ、歯が働いてるときはどんなとき?」
子供「食べてるとき!・・あ!じゃあ食べていないときが休んでるとき!」

このような会話の後に歯が間食2回、つまり5回の食事に耐えられるということを伝えました。
6歳では6が生えてくるので、6をきちんと磨くこととお父さんお母さんに仕上げ磨きをしてもらうことも確認しました。
このように子供たちにたくさん考えさせ答えさせることによって

Fluor!フッ素!Vila!休憩! Vatten!水!

を覚えてもらいます。

本当に驚いたのですが、6歳なのに予防の仕方や歯の知識が頭に入っています。
国民歯科で働いていても思うのですが、年齢にかかわらずみんな予防の仕方をよく知っています。
予防歯科についての基礎知識があります。

小さい頃の教育の成果でスウェーデンの人たちはあまりカリエスがないのではないかと思いました。
(もちろん、歯科医療が高額なことも歯を大切にする理由だとは思いますが)

今回は6歳児のクラスだったので、今度は5年生への講義にもついていこうと思っています。

日本でもこのように子供への歯科の教育が進み、子供たちの予防の知識が向上し、自然とフッ素!休憩!水!を実践できるようになってほしいと願っています。

スウェーデンの国民歯科

私は今 (2017年6月現在) Folktandvården (フォルクタンドヴォーデン)という公共の国民歯科で働いています。

まだ歯科医師免許がないので、歯科助手としてですが。

スウェーデンはLänという、日本でいう都道府県のように分けられています。
それぞれのLänがLandstingという行政機関をもっていて、医療施設や交通機関などをまとめています。
その下にさらに日本でいう市区町村のKommunというまとまりがあり、学校や老人ホーム、ゴミ廃棄、水道などはこのまとまりで整備されています。

私がいるのはStockholm Län, Huddinge Kommun。
つまりはストックホルム県フッディンゲ市のような感じです。

スウェーデン全体では21個のLänと290個のKommunがあるようです。
コミューンにはそれぞれロゴがあり、Huddinge Kommunのロゴは

これはVårdkase(ヴォードカーセ)といって、”信号として、または祝典において野外で灯される大きな炎” がロゴになっています。

Stockholm Kommunのロゴは

Birger Jarlさんといってストックホルムの基礎を建設した人がロゴになっています。

話は逸れましたが、私が今研修をしているFolktandvårdenについて説明します。

——–以下フォルクタンドヴォーデンのページhttp://www.folktandvarden.se/om-folktandvarden/ より引用———–

Om Folktandvården
フォルクタンドヴォーデン(国民歯科)について

Att uppnå en bättre tandhälsa är grunden för vårt arbete och inom Folktandvården finns allmäntandvård, specialisttandvård och sjukhustandvård.

より良い歯の健康を実現するのは、私たちの仕事の基礎です。
国民歯科には一般歯科、専門歯科、病院歯科があります。

Var du än befinner dig i livet har vi möjlighet att hjälpa dig att förbättra din tand- och munhälsa.

人生のどの段階においても私たちはあなたたちの歯やお口の健康を改善する助けになります。

Kort historik
歴史

1924 fattade riksdagen ett beslut om att tillsätta en utredning om tandvård för hela folket.

1924年に政府が、歯科医療を国民全員に提供できるかどうかの調査を依頼しました。

1938 infördes Folktandvården, i första hand för barnen, för att sedan byggas ut i etapper och nya yrkesgrupper tillkom, framförallt tandhygienisterna på sextiotalet

1938年国民歯科が登場しました。
初めは子供のために、その後徐々に全ての年齢に対しての歯科医療ができました。さらに新しい職種、何より、歯科衛生士が1960年代に登場しました。

I Sverige finns idag en övergripande folktandvårdsorganisation i varje landsting/region, totalt 21stycken.

現在スウェーデンは、21つの地域が各自の国民歯科組合を持っています。

Dom flesta har en god tandhälsa
ほとんどの国民の口腔状態は良好です。

Förebyggande tandvård för barn och unga är den viktigaste uppgiften för landstingens och regionernas egen Folktandvård. I över 30 år har Folktandvården gett barn och ungdomar regelbunden och fri tandvård. Därför har svenska barn en mycket god tandhälsa. Sex av tio 12-åringar hade aldrig haft ett enda hål i sina tänder år 2000.
Även de flesta vuxna i Sverige har en bra tandhälsa. Dubbelt så många människor mellan 75 och 84 år har till exempel kvar sina egna tänder jämfört med för tjugo år sedan.

子供と若者の予防歯科が地域の国民歯科の一番大切な任務です。
30年以上にわたって、国民歯科は子供と若者に定期的な無料の歯科医療を提供しています。
なので、スウェーデンの子供の口腔状態はとても良好です。
2000年には、12歳児の10人に6人がカリエスフリーという結果になりました。
スウェーデンの大部分の大人の口腔状態も良好です。
例えば、20年前と比較して2倍の人数の75-84歳の人たちが自分の歯を持っています。

Specialisttandvård
専門歯科

Folktandvården ansvarar också för specialisttandvården. Där behandlar specialisttandläkare mer komplicerade tandproblem. Det handlar om till exempel tandreglering, tandkirurgi, tand- och munsjukdomar samt tandskador.

国民歯科は専門歯科もあります。
ここでは専門医がより複雑な問題、例えば、矯正歯科、外科、歯や組織の病気や歯の外傷についてに対処します。

Källa: Sveriges Kommuner och Landsting

Fakta
事実

Cirka 95-98 % av alla barn får sin tandvård via Folktandvården.

Cirka 40 % av alla vuxna får sin tandvård genom Folktandvården

約95-98%の子供が国民歯科で歯科医療を受けています。
約40%の大人が国民歯科で歯科医療を受けています。

———————————————————

訳がへたくそな部分もありますが、
要するに国民歯科はLandstingによって運営されている公共の歯科医療機関であり、子供、若者の予防歯科がメインとのことです。
通りで子供がかなりたくさん来ているわけです。
子供は2年ごとに義務の検診があり、それぞれの検診でチェックすることが決まっています。
子供が1歳になる前にBVC (barnavårdscentralen 子供の医療機関) や歯科医院で親が子供の口腔衛生指導を受けます。
その後、3歳で自分の住む国民歯科から検診のお知らせが来ます。
(ここでプライベートの歯科を選択してもいいのですがほとんどが国民歯科へ行くようです)そして2年おきに呼び出しがかかります。
私が働いているところでは、歯科医師と衛生士がペアになり、子供を15分おきに検診していきます。

私が働いている歯科の印象は
移民バックグラウンドの子供はカリエスが多いので
おそらく2000年の10人中6人がカリエスフリーという情報は現在は変わってきているように思います。
現に、新聞に移民が多い地域のカリエスが多いという記事が載っていました。
これも後ほど紹介したいと思います。

スウェーデンでは現在21歳まで歯科医療が無料ですが、
来年は22歳、再来年には23歳まで無料の歯科医療が受けられる年齢が引き上げられます。

これは、大学生のときに口腔状態が悪くなるのでその対応ということを聞きましたが定かではないのでまた調べてみます。

スウェーデンで歯医者になる方法⑤ Kompletterande utbildning 二次試験

さて、二次試験は38人から16人に絞るためのさらに細かいふるい分けがされます。

内容は
1, 面接①
2, 面接②
3, 実技試験
です。
二次試験は3日に分けられ、私は最終日でした。

8:00から30分間の初めの面接では、日本にも来たことがあるカリオロジーの先生で話が盛り上がりました。なんと私がスウェーデンに興味をもつきっかけになった先生のコースで講義をしたりと、意外な繋がりに嬉しくなりました。
いきなり日本語であいさつされたのでとても驚きました。
面接内容は主に応募したときに提出した書類を中心に聞かれました。
なぜスウェーデンに来たのか、将来どうするか、国家試験に受かったらどうするのか、なんの分野に興味があるのか、スウェーデンは個人主義、日本はグループ主義だけど適応できているか、そんなことも聞かれました。あとは雑談でした。
両親はスウェーデンに私が移住してさみしがっていないか、自分の娘はオーストラリアにいるけどさみしい。とか、娘が医療機器のアプリを開発しているけど私の夫はどんなプログラミングをしているのか。彼が今開発している電動歯ブラシの話。そんな感じでした。

将来専門医になったり大学院に興味があるならコースはいいよ、とオススメされました。あっという間の30分。楽しかったです。面接が終わった後、「次の面接官はエンドの専門医だよー!君は運がいいね!」と言われました。

2回目の面接は本当に楽しくて時間を少しオーバーしてしまいました。
この面接では英語のテストもありました。英語の短い文章を読んで内容を伝えました。文章はとても簡単だったので良かったですが、英語をスウェーデン語で説明するのでかなり混乱しました。
あとは、「フッ素恐怖症の患者さんが来たらどう説明するか」「患者症例はどうだったか」「エンドのほかに興味がある分野はあるか」と問われました。
そのあとはエンドあるあるで盛り上がりました。日本のエンドはスウェーデンと同じか少し上くらいだと言われすごく嬉しくなりました。
水酸化カルシウムってどうやって使ってる?と質問されたので、こちらも熱が入り説明をたくさんしてしまいました。

私ともう一人、9時に面接が終わったのですが
次の実習テストは13:00から…
初対面にもかかわらずシリアから来たその矯正専門医とカロリンスカのカフェで時間をつぶしました。彼は去年もKUTに応募したそうですが、二次試験にも呼ばれなかったそうです。
私と同じく公共歯科の専門科が集まった病院の矯正科で働いており、シリアから来る前はサウジアラビアで働いていたそうです。
彼も入学が決まったようなので心強いです。

実習テストは人形を使った形成でした。
26のMKクラウン形成、11のM3級窩洞、25のMO2級窩洞の形成でした。
思うようにいかず後悔する結果になりました・・・。

点数のつけられ方は、
患者症例3点、面接10点、実技3点の16点が満点となります。
受験者は点数がつけられ、上から16人(今年は訳があり15人)が選抜されました。

自分がAntagen(入学許可)されたかどうかは例のAntagen.seに掲示されます。
結果の前に自分の点数がそこで見られるのでかなりドキドキしました。
まず結果が分かる数日前にそのページに、
自分のメリットポイントが「○○点です。」
と掲示され、その数日後に受かったかどうかが掲示されます。

”ANTAGEN”

(落ちたらStruken)

の文字を見てほっとして脱力しました。

最初は選抜基準が厳しくなり、落ち込みましたが
結果的に公正に選んでもらえたので良かったと今は思います。

これでやっとカロリンスカのKUTに通えることになりました!

スウェーデンで歯医者になる方法④ Kompletterande utbildning 筆記試験

スウェーデンで歯科医師免許をとる方法の2つ目として、
大学のコースに通う方法があります。

Kompletterande Utbildning för Tandläkare (歯科医師のための補完コース、通称KUT) といって、2010年に開設されたEU圏以外で教育を受けた歯科医師のためのコースです。現在はカロリンスカ大学、ヨーテボリ大学で開講されており、2018年からはマルメ大学でも開講が予定されています。

年々受験者が増加し、今年は定員16名に対して130人ほどの応募があったようです。

では、どうやってその16人を決めるのでしょう。

詳しく説明をする前に、まずはスウェーデンの受験について少しお話します。
スウェーデンでは大学や何らかのコースに入る際にAntagning.seという進学を管理するサイト(受験サイト)に登録します。
Antagning.seで自分の入りたいコースを選択し、応募します。
そのサイトには自分のプロフィールページがあり、そこにコースの受験に必要な資料をアップロードします。
その後それぞれの大学やコースの基準で応募者にMeritvärde(メリットポイント)がつけられ、点数が高い順にAntagen(英語でadmit=入学が許可)されます。
ある大学は高校の成績をもとにポイントがつけられたり、論文を書いたり面接を受けてポイントがつけられるところもあります。

KUTの場合、
2016年までは、応募用紙に情報(卒業した大学、受けた教育、スウェーデン語の証明、英語の実力、スウェーデンでの歯科医療施設での労働経験の有無、自己アピール等)を書き込み提出、大学側がそれぞれにメリットポイントを付けて点数が高いもの40名ほどを面接に呼び、16人に絞っていたようですが
その方法では正しい人材を選べず2016年のカロリンスカの受講者は言語、知識ともに基準に達していない者が入学してしまったとのことで2017年からは選抜基準が変わりました。

今年もこれまで同様に応募時に応募用紙を記載し提出しましたが、自己アピールの欄が削除されました。応募時に必須になるのはスウェーデン語3かC1まで終わっていること(来年からはC1は認められなくなります)、母国で歯科医師として1年以上働いていること(これは不確かです。なぜなら歯科医師として働いた経験がない者が多数受験していたので)、母国で歯科医師免許を有していることです。
その他に教育の内容、英語の実力、専門医かどうか、大学院を卒業しているか、スウェーデン国内の歯科医院で働いたことがあるかを記載する欄もあり、それらの項目は面接時に質問されメリットポイントになります。

まずAntagning.seからカロリンスカのKUTに応募し、受験資格があるもの全員が大学に呼ばれ筆記試験を受けました。
私はカロリンスカを第一希望、ヨーテボリを第二希望にしたのですが、第一希望の場所で筆記試験を受けることになります。
その試験結果が良かった順に35~40人が選ばれ次のステップに進むことができます。

試験の内容はマルチプルチョイスで、国家試験よりも簡単な内容になっていました。国家試験と同じ内容も数問ありました。現に二次試験に進んだ38人のほとんどが国家試験を受けていた人でした。
同じ日に筆記試験のほかに『患者症例』もありました。
この患者症例は、二次試験に進むためには関係ないのですが
二次試験でメリットポイントを付けるうえでポイントになります。
患者さんの口腔内写真とレントゲンだけが用意されており、
1,この状態で患者さんが訴えているであろう症状
2,各歯の診断
3,治療計画
を書きました。

患者の主訴やプロービング値などもなにもなくただ写真だけだったのでとてもやりにくかったです。

結果はメールで知らされます。
メールで、「二次試験の案内」がくるか「残念ながら二次試験にはすすめません」がくるかかなり緊張して待ちました。

無事二次試験に進めましたが、次の難関が待っていました。

今まで、これからのながれ

2012年に都内の歯学部卒業
2012~2013年 卒業した大学歯科病院で研修医として働く
2013年~2015年 一般開業医でバイトをしながら某歯科病院の歯内療法科で働く

2016年2月13日にスウェーデンはストックホルムに移住。

2月税務署にPersonnummer(パショーンヌンメル)の申請。(スウェーデンではPersonnummerというパーソナルナンバーが住むための必需品です。このナンバーでスウェーデンの住民は管理されています。)
Personnummer取得後、ID申請。取得。

Personnummer取得後、語学学校に申請。
4月より語学学校開始。

通常は自分の住むエリアの語学学校SFI(移民のためのスウェーデン語学校)に通うことになりますが、母国で医療系免許を持つ人はSFA-medicinという医療専門の語学学校に通うことができます。SFAはSödertälje(セーデルテリエ)というストックホルムの南のほうの町と、Köping(シャーピン)という場所に2か所あります。

ストックホルムからはセーデルテリエのほうが近いので私はそちらの語学学校に通いました。クラスメイトは医者、歯医者、看護師、薬剤師、理学療法士でした。

そのほかにも医療用のKorta vägenというインテンシブな語学学校もあります。
どちらも一般的なスウェーデン語に加えて職業スウェーデン語という科目があり、医療系のスウェーデン語を教えてくれます。

0から始めると1年半かかりますが、
私は日本でB1というレベルまで取っていたので、SASという高校レベルのスウェーデン語から勉強を開始することができました。

12月にSFA-medicinを卒業。

1月後半よりFolktandvården(フォルクタンドヴォーデン) (公立歯科、以下FTV) にて歯科助手(アシスタント)として研修開始。
毎日研修しながらKunskapsprov (国家試験) の勉強開始

3月22日にKunskapsprov受験。合格

5月9日にKIのKompletterande utbildning (歯科補完コース、通称KUT) の1次試験受験。合格。

6月1日KUTの二次試験 (面接、実技)受験、KUT合格

6月8日Kunskapsprovの実技試験受験。合格

7月2日でFTVでの研修終了。
7月10日からはチーム雇用としてFTVで歯科助手として働く。

8月より始まるKUTを受講予定。

2018年6月KUT卒業、歯科医師免許取得予定。

スウェーデンで歯医者になる方法③ Kunskapsprov 実技試験

第一回目の実技試験は6/8に行われました。

午前はOSCE形式の実技
午後は模型を使ってエンド(形成→根充)、形成です。

試験1週間前にOSCEの情報が送られてきました。
4ステーション+2つの休憩所があり、各12分ずつです。

1ステーション目は
メタボンブリッジのフレーム試適。
メタボンはスウェーデンではMK (エムコー) ブロー(ブリッジ)かクローナ(クラウン)といいます。MKはMetal Keramikの意味です。
フレームを試適してメタルの厚さが0.5mmあるか、ポーセレンのスペースが1mmあるかを調べたり、適合を調べたりします。最後にBWを1枚撮って終了。

緊張しすぎて、模型の人形にいちいち話しかけていたら
『話しかけないで大丈夫だよ』と苦笑されました。

2ステーション目は
小児矯正。
8歳の男の子の模型と写真を見て、必要な審査項目、診断、治療の必要性、治療の時期、治療計画を説明しました。
模型では前歯のクロスバイト (Frontal invertering) でした。
スウェーデンの矯正は日本で習ったことがなかったものがたくさん出てきたのでとても面白かったです。これも後に書こうと思います。

3ステーション目は
何種類もの薬を飲んでいるお年寄りへの鎮痛剤と抜歯の説明。
患者さんはWaran(ワーファリン)を飲んでいたので、飲んでいい鎮痛薬や抜歯するときの決まりがあり、それを説明する問題です。
これも詳しく後に書こうと思います。
患者さん役の人がすごく上手で、笑わさせられました。

患『右の歯が痛いので今すぐ抜いてほしい』
私『ワラーン飲んでいるので今すぐは抜けません。痛み止めを出します。来週抜歯するまで左でかんでください。タバコも、なるべく辞めましょう』ということを丁寧に言いました。
すると患者さんは
『タバコも左側だけで吸うから大丈夫』と言ってきて
判定者も大笑いしていました。

4ステーション目は筋・筋膜痛症候群と歯痛の診断
医療面接をし、口腔外診査、口腔内診査を行い、診断、鑑別診断を答えました。

次は実習テスト。

まずはエンドの形成→根充です。
私が習ったエンドとだいぶやり方が違うのでこれもあとで書きます。
レントゲンをたくさん取らなければいけないので時間がギリギリで焦りました。

次は25, 46のMKクローナの形成。
要はメタボンの形成です。

テストは8:30-14:30まで。
とにかく緊張と疲れでへとへとになりました。

———————追記———————–
6月20日に結果が分かり、無事に合格していました。
なかなかいい点数が取れておりとても嬉しいです。

スウェーデンで歯医者になる方法②Kunskapsprov 筆記試験

日本人歯科医師がスウェーデンで免許を取得する2通りの方法を詳しく説明します。
まずは
1、国家試験を受ける方法

国家試験を受け、それに合格すると歯科医療施設で歯科医師として研修をする権利がもらえます。自分で研修先を探して6ヵ月間歯科医師として研修をし、さらに法律のコース (Författningskurs) をネットで受け、Sosに申請すればスウェーデンの免許を取得できます。

スウェーデンでは現在EU以外の歯科医師のための国家試験、Kunskapsprovが実施されています。
2016年からシステムがガラッと変わり、今までは4科目(小児、成人歯科、基礎、実技)を2回に分けて試験を受けるシステムでしたが、現在は筆記試験をまず受けてそれに合格した者は実技試験を受けるシステムになりました。

2017年~2020年まではカロリンスカ研究所 (KI) が責任者になっています。
(ちなみに医師はUmeå(ウメオ)大学です。)

2017年3月22日にシステムが変わってから初めての筆記試験があり、
6月、9月、12月にも施行されます。
3月22日の筆記に受かったものは、実技試験を受ける権利を与えられます。
実技試験は6月、2018年1月に実施されます。
筆記試験は3回、実技試験は2回までしか受けられず、もしそれ以上落ちてしまった場合は違う方法で免許を取らなければいけません。

システムが変わってから、kunskapsprovを受けるにあたり語学のレベルが問われなくなりました。去年まではSvenska 3かC1の資格を持っている者のみが受験できました。
しかし、テストは全てスウェーデン語のためスウェーデン語ができないと困難な内容になっています。

私は3/22にKunskapsprovを受けました。

試験は9:00-15:00(今は15:30までに変更)
パソコンで、マルチプルチョイス+筆記でした。
3部に分かれており、
1部は成人1症例(25問)+小児1症例(18問)
2部は英語の論文
3部は成人1症例 でした。
1症例といっても、1人の患者さんの情報から派生した問題がたくさん出るような感じです。治療計画、レントゲン読影、治療方法、説明方法、患者さんが持つ基礎疾患についての問題、診断、解剖、薬理。実際の臨床に基づいた問題が多かったのですが、慣れないスウェーデン語と長時間パソコンとにらめっこしていたので頭がくらくらしました。

Sosにはエビデンスに基づいたナショナルガイドラインがあるのですが、テスト中省略版のガイドラインが配布されていました。
例えば、慢性歯周病の患者においてガイドラインに基づいて勧められる治療は何か。→ガイドラインを見て、エビデンスの高いものを答えるような問題も数問ありました。

小児は咬合誘導や外傷、定期検診で見る項目などについて問われました。

英語の論文はフッ素について。研究デザインや内容を選ぶ問題でした。
また、保育園おける齲蝕予防について提案する問題もありました。

3部の患者症例30問。
これは1人の患者さんの治療計画を立てながら様々な問題に答えるような形でした。前には戻れない形式で、だいたい次のページに答えが書いてあるので精神的にあまりよくないです。

例えば、
『問1、まず行うことは何か
1,レントゲン
2,診査
3,医療面接』
で答えを選んで次のページに行くと、

『問2、(1) あなたはレントゲンをまず撮影しました。以下のレントゲンを見てカリエス、歯周組織について読影をし所見を書きなさい。
(2) 各歯牙について診断しなさい』

ここで医療面接を選んだりしていると、「レントゲンだったのか・・・」とがっかりします。
--------------------------------
テストの合格ラインは70%
各部で50%以上です。

3/22のテストは61人が受験し6人が合格しました。

次は実技試験について書きたいと思います。

スウェーデンで歯医者になる方法①

EU圏の国やスイスで教育を受けた歯科医師はスウェーデンで免許が使えます。
(ただし、2016年から法律が変わり、今まではEU圏内で免許取得後すぐにスウェーデンでも働けたのが、今はスウェーデン語をSvenska 3またはC1(高校卒業レベル)まで終わらせていることが免許切り替えの条件になりました)

ただし、例えば日本人歯科医師が歯科医師免許を簡単に取得できるEUの国で免許を取得したとしても、その国で3年以上働かなければスウェーデンでは働けません。

EU・スイス以外の国で教育を受けた歯科医師は、まず自分が受けた教育がスウェーデンで認められるかどうかをスウェーデンの厚生労働省的機関であるSocialstyrelsen (Sos) にチェックしてもらいます。
https://legitimation.socialstyrelsen.se/sv/utbildad-utanfor-eu-och-ees

提出書類は
・卒業証明書
・大学の授業の内容、何年教育を受けたかの証明
・Sosの質問用紙
・Personbevis(税務署でもらう証明書)又は身分証明書

すべてオリジナルの言葉と英語の書類が必要で、
原本をコピーしてもらいVidimeringといって第三者に署名してもらいます。

提出後はSosで提出者が受けた教育がスウェーデンで認められるか認められないかが調査され、返事が送られてきます。

教育が認められなかった人(教育が4年間だったり、大学のコース内容がスウェーデンの基準を満たしていないなどの理由)は歯科大学に入り直し教育を受けなおさなければなりません。
運がいい人は途中の学期からいれてもらえるようですが、4年ほどの教育を受けなければなりません。

教育が認められた人(日本人の歯科医師たちはここに入ります)は、スウェーデンの免許を取得するために不足している部分を”補完”するという形で免許をもらうことができます。

2通りの方法があり、

1、国家試験を受ける方法
2、カロリンスカ大学、ヨーテボリ大学、マルメ大学(来年から)の補完コースに1年行く方法

があります。

次のポストでは2通りの方法について詳しく説明します。

 

自己紹介

初めまして。

スウェーデンに移住してきて1年と4ヵ月がたちました。
ここで歯医者として働きたくて日々奮闘中です。

なかなか珍しい体験をしていると思うので、
日々の生活、スウェーデンの歯科の実際や日本の歯科との比較を記録したいと思います。

スウェーデンに興味を持ったのは私が大学3年生の時。
カリオロジーの授業で、スウェーデンに詳しい先生がスウェーデンの予防型歯科の話をしたのにとても感銘を受けて、『将来絶対スウェーデンで勉強したい』と思うようになりました。

大学3年生が終わった春休み、どうしてもスウェーデンに行きたかった私は
母校の先生方の紹介でマルメ大学に見学に行けることになり2日間ですがカリオロジーの先生に大学や研究室を案内していただきました。
カリオグラムやなるべく削らない予防中心の歯科医療の話を聞き、
将来スウェーデンで学びたいという思いが一層強くなりました。

卒業後は大学院か、外国人向けの専門のコースに行きたいな、と思っていたところ
帰国後にスウェーデン人と出会い、卒業後結婚。

”外国人”としてお金を払い学ぶのではなく、”移民歯科医師”として歯科医師免許を取得するチャンスを手に入れたので、こちらで免許を取るべく今精一杯頑張っています。