スウェーデンで歯医者になる方法④ Kompletterande utbildning 筆記試験

スウェーデンで歯科医師免許をとる方法の2つ目として、
大学のコースに通う方法があります。

Kompletterande Utbildning för Tandläkare (歯科医師のための補完コース、通称KUT) といって、2010年に開設されたEU圏以外で教育を受けた歯科医師のためのコースです。現在はカロリンスカ大学、ヨーテボリ大学で開講されており、2018年からはマルメ大学でも開講が予定されています。

年々受験者が増加し、今年は定員16名に対して130人ほどの応募があったようです。

では、どうやってその16人を決めるのでしょう。

詳しく説明をする前に、まずはスウェーデンの受験について少しお話します。
スウェーデンでは大学や何らかのコースに入る際にAntagning.seという進学を管理するサイト(受験サイト)に登録します。
Antagning.seで自分の入りたいコースを選択し、応募します。
そのサイトには自分のプロフィールページがあり、そこにコースの受験に必要な資料をアップロードします。
その後それぞれの大学やコースの基準で応募者にMeritvärde(メリットポイント)がつけられ、点数が高い順にAntagen(英語でadmit=入学が許可)されます。
ある大学は高校の成績をもとにポイントがつけられたり、論文を書いたり面接を受けてポイントがつけられるところもあります。

KUTの場合、
2016年までは、応募用紙に情報(卒業した大学、受けた教育、スウェーデン語の証明、英語の実力、スウェーデンでの歯科医療施設での労働経験の有無、自己アピール等)を書き込み提出、大学側がそれぞれにメリットポイントを付けて点数が高いもの40名ほどを面接に呼び、16人に絞っていたようですが
その方法では正しい人材を選べず2016年のカロリンスカの受講者は言語、知識ともに基準に達していない者が入学してしまったとのことで2017年からは選抜基準が変わりました。

今年もこれまで同様に応募時に応募用紙を記載し提出しましたが、自己アピールの欄が削除されました。応募時に必須になるのはスウェーデン語3かC1まで終わっていること(来年からはC1は認められなくなります)、母国で歯科医師として1年以上働いていること(これは不確かです。なぜなら歯科医師として働いた経験がない者が多数受験していたので)、母国で歯科医師免許を有していることです。
その他に教育の内容、英語の実力、専門医かどうか、大学院を卒業しているか、スウェーデン国内の歯科医院で働いたことがあるかを記載する欄もあり、それらの項目は面接時に質問されメリットポイントになります。

まずAntagning.seからカロリンスカのKUTに応募し、受験資格があるもの全員が大学に呼ばれ筆記試験を受けました。
私はカロリンスカを第一希望、ヨーテボリを第二希望にしたのですが、第一希望の場所で筆記試験を受けることになります。
その試験結果が良かった順に35~40人が選ばれ次のステップに進むことができます。

試験の内容はマルチプルチョイスで、国家試験よりも簡単な内容になっていました。国家試験と同じ内容も数問ありました。現に二次試験に進んだ38人のほとんどが国家試験を受けていた人でした。
同じ日に筆記試験のほかに『患者症例』もありました。
この患者症例は、二次試験に進むためには関係ないのですが
二次試験でメリットポイントを付けるうえでポイントになります。
患者さんの口腔内写真とレントゲンだけが用意されており、
1,この状態で患者さんが訴えているであろう症状
2,各歯の診断
3,治療計画
を書きました。

患者の主訴やプロービング値などもなにもなくただ写真だけだったのでとてもやりにくかったです。

結果はメールで知らされます。
メールで、「二次試験の案内」がくるか「残念ながら二次試験にはすすめません」がくるかかなり緊張して待ちました。

無事二次試験に進めましたが、次の難関が待っていました。

今まで、これからのながれ

2012年に都内の歯学部卒業
2012~2013年 卒業した大学歯科病院で研修医として働く
2013年~2015年 一般開業医でバイトをしながら某歯科病院の歯内療法科で働く

2016年2月13日にスウェーデンはストックホルムに移住。

2月税務署にPersonnummer(パショーンヌンメル)の申請。(スウェーデンではPersonnummerというパーソナルナンバーが住むための必需品です。このナンバーでスウェーデンの住民は管理されています。)
Personnummer取得後、ID申請。取得。

Personnummer取得後、語学学校に申請。
4月より語学学校開始。

通常は自分の住むエリアの語学学校SFI(移民のためのスウェーデン語学校)に通うことになりますが、母国で医療系免許を持つ人はSFA-medicinという医療専門の語学学校に通うことができます。SFAはSödertälje(セーデルテリエ)というストックホルムの南のほうの町と、Köping(シャーピン)という場所に2か所あります。

ストックホルムからはセーデルテリエのほうが近いので私はそちらの語学学校に通いました。クラスメイトは医者、歯医者、看護師、薬剤師、理学療法士でした。

そのほかにも医療用のKorta vägenというインテンシブな語学学校もあります。
どちらも一般的なスウェーデン語に加えて職業スウェーデン語という科目があり、医療系のスウェーデン語を教えてくれます。

0から始めると1年半かかりますが、
私は日本でB1というレベルまで取っていたので、SASという高校レベルのスウェーデン語から勉強を開始することができました。

12月にSFA-medicinを卒業。

1月後半よりFolktandvården(フォルクタンドヴォーデン) (公立歯科、以下FTV) にて歯科助手(アシスタント)として研修開始。
毎日研修しながらKunskapsprov (国家試験) の勉強開始

3月22日にKunskapsprov受験。合格

5月9日にKIのKompletterande utbildning (歯科補完コース、通称KUT) の1次試験受験。合格。

6月1日KUTの二次試験 (面接、実技)受験、KUT合格

6月8日Kunskapsprovの実技試験受験。合格

7月2日でFTVでの研修終了。
7月10日からはチーム雇用としてFTVで歯科助手として働く。

8月より始まるKUTを受講予定。

2018年6月KUT卒業、歯科医師免許取得予定。

スウェーデンで歯医者になる方法③ Kunskapsprov 実技試験

第一回目の実技試験は6/8に行われました。

午前はOSCE形式の実技
午後は模型を使ってエンド(形成→根充)、形成です。

試験1週間前にOSCEの情報が送られてきました。
4ステーション+2つの休憩所があり、各12分ずつです。

1ステーション目は
メタボンブリッジのフレーム試適。
メタボンはスウェーデンではMK (エムコー) ブロー(ブリッジ)かクローナ(クラウン)といいます。MKはMetal Keramikの意味です。
フレームを試適してメタルの厚さが0.5mmあるか、ポーセレンのスペースが1mmあるかを調べたり、適合を調べたりします。最後にBWを1枚撮って終了。

緊張しすぎて、模型の人形にいちいち話しかけていたら
『話しかけないで大丈夫だよ』と苦笑されました。

2ステーション目は
小児矯正。
8歳の男の子の模型と写真を見て、必要な審査項目、診断、治療の必要性、治療の時期、治療計画を説明しました。
模型では前歯のクロスバイト (Frontal invertering) でした。
スウェーデンの矯正は日本で習ったことがなかったものがたくさん出てきたのでとても面白かったです。これも後に書こうと思います。

3ステーション目は
何種類もの薬を飲んでいるお年寄りへの鎮痛剤と抜歯の説明。
患者さんはWaran(ワーファリン)を飲んでいたので、飲んでいい鎮痛薬や抜歯するときの決まりがあり、それを説明する問題です。
これも詳しく後に書こうと思います。
患者さん役の人がすごく上手で、笑わさせられました。

患『右の歯が痛いので今すぐ抜いてほしい』
私『ワラーン飲んでいるので今すぐは抜けません。痛み止めを出します。来週抜歯するまで左でかんでください。タバコも、なるべく辞めましょう』ということを丁寧に言いました。
すると患者さんは
『タバコも左側だけで吸うから大丈夫』と言ってきて
判定者も大笑いしていました。

4ステーション目は筋・筋膜痛症候群と歯痛の診断
医療面接をし、口腔外診査、口腔内診査を行い、診断、鑑別診断を答えました。

次は実習テスト。

まずはエンドの形成→根充です。
私が習ったエンドとだいぶやり方が違うのでこれもあとで書きます。
レントゲンをたくさん取らなければいけないので時間がギリギリで焦りました。

次は25, 46のMKクローナの形成。
要はメタボンの形成です。

テストは8:30-14:30まで。
とにかく緊張と疲れでへとへとになりました。

———————追記———————–
6月20日に結果が分かり、無事に合格していました。
なかなかいい点数が取れておりとても嬉しいです。

スウェーデンで歯医者になる方法②Kunskapsprov 筆記試験

日本人歯科医師がスウェーデンで免許を取得する2通りの方法を詳しく説明します。
まずは
1、国家試験を受ける方法

国家試験を受け、それに合格すると歯科医療施設で歯科医師として研修をする権利がもらえます。自分で研修先を探して6ヵ月間歯科医師として研修をし、さらに法律のコース (Författningskurs) をネットで受け、Sosに申請すればスウェーデンの免許を取得できます。

スウェーデンでは現在EU以外の歯科医師のための国家試験、Kunskapsprovが実施されています。
2016年からシステムがガラッと変わり、今までは4科目(小児、成人歯科、基礎、実技)を2回に分けて試験を受けるシステムでしたが、現在は筆記試験をまず受けてそれに合格した者は実技試験を受けるシステムになりました。

2017年~2020年まではカロリンスカ研究所 (KI) が責任者になっています。
(ちなみに医師はUmeå(ウメオ)大学です。)

2017年3月22日にシステムが変わってから初めての筆記試験があり、
6月、9月、12月にも施行されます。
3月22日の筆記に受かったものは、実技試験を受ける権利を与えられます。
実技試験は6月、2018年1月に実施されます。
筆記試験は3回、実技試験は2回までしか受けられず、もしそれ以上落ちてしまった場合は違う方法で免許を取らなければいけません。

システムが変わってから、kunskapsprovを受けるにあたり語学のレベルが問われなくなりました。去年まではSvenska 3かC1の資格を持っている者のみが受験できました。
しかし、テストは全てスウェーデン語のためスウェーデン語ができないと困難な内容になっています。

私は3/22にKunskapsprovを受けました。

試験は9:00-15:00(今は15:30までに変更)
パソコンで、マルチプルチョイス+筆記でした。
3部に分かれており、
1部は成人1症例(25問)+小児1症例(18問)
2部は英語の論文
3部は成人1症例 でした。
1症例といっても、1人の患者さんの情報から派生した問題がたくさん出るような感じです。治療計画、レントゲン読影、治療方法、説明方法、患者さんが持つ基礎疾患についての問題、診断、解剖、薬理。実際の臨床に基づいた問題が多かったのですが、慣れないスウェーデン語と長時間パソコンとにらめっこしていたので頭がくらくらしました。

Sosにはエビデンスに基づいたナショナルガイドラインがあるのですが、テスト中省略版のガイドラインが配布されていました。
例えば、慢性歯周病の患者においてガイドラインに基づいて勧められる治療は何か。→ガイドラインを見て、エビデンスの高いものを答えるような問題も数問ありました。

小児は咬合誘導や外傷、定期検診で見る項目などについて問われました。

英語の論文はフッ素について。研究デザインや内容を選ぶ問題でした。
また、保育園おける齲蝕予防について提案する問題もありました。

3部の患者症例30問。
これは1人の患者さんの治療計画を立てながら様々な問題に答えるような形でした。前には戻れない形式で、だいたい次のページに答えが書いてあるので精神的にあまりよくないです。

例えば、
『問1、まず行うことは何か
1,レントゲン
2,診査
3,医療面接』
で答えを選んで次のページに行くと、

『問2、(1) あなたはレントゲンをまず撮影しました。以下のレントゲンを見てカリエス、歯周組織について読影をし所見を書きなさい。
(2) 各歯牙について診断しなさい』

ここで医療面接を選んだりしていると、「レントゲンだったのか・・・」とがっかりします。
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テストの合格ラインは70%
各部で50%以上です。

3/22のテストは61人が受験し6人が合格しました。

次は実技試験について書きたいと思います。

スウェーデンで歯医者になる方法①

EU圏の国やスイスで教育を受けた歯科医師はスウェーデンで免許が使えます。
(ただし、2016年から法律が変わり、今まではEU圏内で免許取得後すぐにスウェーデンでも働けたのが、今はスウェーデン語をSvenska 3またはC1(高校卒業レベル)まで終わらせていることが免許切り替えの条件になりました)

ただし、例えば日本人歯科医師が歯科医師免許を簡単に取得できるEUの国で免許を取得したとしても、その国で3年以上働かなければスウェーデンでは働けません。

EU・スイス以外の国で教育を受けた歯科医師は、まず自分が受けた教育がスウェーデンで認められるかどうかをスウェーデンの厚生労働省的機関であるSocialstyrelsen (Sos) にチェックしてもらいます。
https://legitimation.socialstyrelsen.se/sv/utbildad-utanfor-eu-och-ees

提出書類は
・卒業証明書
・大学の授業の内容、何年教育を受けたかの証明
・Sosの質問用紙
・Personbevis(税務署でもらう証明書)又は身分証明書

すべてオリジナルの言葉と英語の書類が必要で、
原本をコピーしてもらいVidimeringといって第三者に署名してもらいます。

提出後はSosで提出者が受けた教育がスウェーデンで認められるか認められないかが調査され、返事が送られてきます。

教育が認められなかった人(教育が4年間だったり、大学のコース内容がスウェーデンの基準を満たしていないなどの理由)は歯科大学に入り直し教育を受けなおさなければなりません。
運がいい人は途中の学期からいれてもらえるようですが、4年ほどの教育を受けなければなりません。

教育が認められた人(日本人の歯科医師たちはここに入ります)は、スウェーデンの免許を取得するために不足している部分を”補完”するという形で免許をもらうことができます。

2通りの方法があり、

1、国家試験を受ける方法
2、カロリンスカ大学、ヨーテボリ大学、マルメ大学(来年から)の補完コースに1年行く方法

があります。

次のポストでは2通りの方法について詳しく説明します。

 

自己紹介

初めまして。

スウェーデンに移住してきて1年と4ヵ月がたちました。
ここで歯医者として働きたくて日々奮闘中です。

なかなか珍しい体験をしていると思うので、
日々の生活、スウェーデンの歯科の実際や日本の歯科との比較を記録したいと思います。

スウェーデンに興味を持ったのは私が大学3年生の時。
カリオロジーの授業で、スウェーデンに詳しい先生がスウェーデンの予防型歯科の話をしたのにとても感銘を受けて、『将来絶対スウェーデンで勉強したい』と思うようになりました。

大学3年生が終わった春休み、どうしてもスウェーデンに行きたかった私は
母校の先生方の紹介でマルメ大学に見学に行けることになり2日間ですがカリオロジーの先生に大学や研究室を案内していただきました。
カリオグラムやなるべく削らない予防中心の歯科医療の話を聞き、
将来スウェーデンで学びたいという思いが一層強くなりました。

卒業後は大学院か、外国人向けの専門のコースに行きたいな、と思っていたところ
帰国後にスウェーデン人と出会い、卒業後結婚。

”外国人”としてお金を払い学ぶのではなく、”移民歯科医師”として歯科医師免許を取得するチャンスを手に入れたので、こちらで免許を取るべく今精一杯頑張っています。